のび太と奇跡の島

 HUNTER×HUNTERはどこまで続くのかと先週書いたら、今週で次の話の引きを作って休載に入ったでござるの巻。


 映画ドラえもん観てきました。いや、ポケモンの映画だったのかもしれません。
 今回は原作が短編の「モアよドードーよ永遠に」とはなっているものの、絶滅動物ばかりが住む島が出てくるというモチーフを借りた、実質的なオリジナル映画でした。で、原作では「絶滅動物の行き先を自分達で作って楽園を築く」という流れになっているのに対し、映画では「絶滅動物が何故か今も生き続けている島がある」というところから話を膨らませています。まあそこに関しては特に文句は無いのですが(人型の犬とかがいる世界ですし)、何故彼らが生きられるかの理由が「宇宙からの不思議な力」と、「ゴールデンヘラクレスと呼ばれる守り神的なカブトムシ」というのがなんだかなあと。このカブトムシを「伝説のポケモン」に入れ替えてもそれほど違和感が無いというのでは、ドラえもんの映画の意味が無いと思うんですよ。
 思えば大長編ドラえもんというのは、毎回幻想的な舞台が用意されていますが、そこに生きる人々はそれほど特殊な存在ではないというところに一定のリアリティがあったと思うのです。犬から進化した知的生物や海底人、あるいは地底人や魔法の使えるパラレルワールド等など、しかしその全てにそれなりの理由付けや生活感が描かれていて、そこが藤子F不二雄的なSF(すこしふしぎ)感を作っているんですよ。なのに今回は「不思議な生物が不思議な世界を作っている」という、従来とはまるで逆の手法で舞台が作られています。しかも作中でその不思議な生物の不思議たる面が解明されるわけでもないから、最後まで世界観が宙に浮いたままです。
 それで最後までファンタジーで通してくれるのならまだしも、その奇跡の島には調査する科学者がいるというのだからまたわからない。解明する気があるのか無いのか。そして奇跡の島には原住民もいるのですが、その原住民と科学者との関係はどうなのかも最後まで全く語られませんから、科学者の科学者たる意味が全然感じられません(まあ、そんな島に原住民がいる時点でかなり怪しいんですが……)。最初に絶滅動物の解説をしただけで、正直いりませんでした。解説するだけなら山寺さんが「解説しよう!」とかナレーション入れるだけで済むというのに(山寺さんがゲスト出演してるところもポケモン映画っぽい)。大体、絶滅動物云々の話だって物語のきっかけになっているだけで、話の主軸はカブトムシの方に行ってしまっており、こっちもまたいらない子になってしまっています。
 ゲストキャラのダッケこと子供時代ののび助についても、最初にのび助として記憶を失うシーンをハッキリ描いてしまっているので、のび太と共演するシーンはそれなりに感動できても、最後に記憶が戻って「あいつ、僕のパパだったんだ!」というシーンでの感動はほとんどありません。皆知ってるし。ワスレンボーを最初にチョロッとだけ出して、ドラえもんを知ってる人はニヤリとできる、ぐらいの構成だったらまだ良かったと思います。まあ、大長編で父と子の絆を描いたことは無かったのでそれなりに面白い試みではあるんですが、それにしては舞台設定が特殊すぎますし、全体的にチグハグな印象です。
 チグハグと言えば、そういう大きな構成だけでなく、細かいシーンごとの繋ぎも非常に雑に感じました。例えば便利なひみつ道具が壊れて使えなくてのび太がうろたえ、それをしずちゃんが「道具が無いと何もできないの?」と怒るシーンがあるのですが、そこでのび太が反省するのではなく他のキャラが「俺がやる」「俺がやる」と言い出していつの間にか皆団結していたところには唖然としました。のび太さっきショボンとしてたじゃん、なんでしずちゃんと一緒に笑顔でいられるの?単なるギャグシーンだとしたらしずちゃんの説教がやけにマジっぽくない?他にもドラえもんサイドと敵サイドが交互に描写されるシーンもぶつ切りで理解しにくかったり、話が展開するというより一つひとつイベントを消化していくように見えたりで、終わった頃には全然心に残っていませんでした。


 前作の鉄人兵団リメイクの時も、元の話がかなり好きなので、オリジナル要素が出てきた時点で萎えていたんですが、それでもラストには恥ずかしながら号泣していた私ですから、今回も割と期待していたのですが、どうにも期待外れだったとしか言えません。
 じゃあなんで鉄人兵団で泣いちゃったのかなあと今回観返してみたんですが、どうもストーリーとか演出に泣かされたんじゃなく、リルル役の沢城みゆきさんの熱演に負けただけだったみたいです。思えば、沢城さんは結構好きな声優さんなので割とチェックしていたはずなんですが、最初に映画を観た時はクレジットが出るまで全く気付きませんでしたし、あの人の演技力は本当にヤバイと、改めて認識した次第です。