正義もなめるな!この蛇口野郎!

 今週のキン肉マン、最高に盛り上がったところで二週休載とは、とんだ地獄のコンビネーションですね。ゆで中井先生の急病とあらば仕方ないのですが、これはもう休載明けでネメシスの足が上がりっ放しになっていてロビンがハンモックで寝てるぐらいの展開があるに違いありませんよ。
 等という冗談は置いといて、あの白い羽は間違いなくザ・ペンタゴンでしょう。これでザ・ニンジャの水鳥羽輪の術だったら笑いますし、まさか縁もゆかりもないザ・ホークマンが助けにくるわけはありませんから、ここから先はペンタゴンが来たものとして書きます。どうでもいいですけど「ザ」ばっかりですね。


 ペンタゴンが来るというのは前々から言われていました。まあ「ゆで先生がインタビューで匂わせていたから」という身も蓋もない理由もあるのですが、新シリーズが始まってから今までの展開を読み直してみるに、ペンタゴンが出場する土台は十分出来上がっていたように思えます。
 まず、新シリーズが始まってからペンタゴンが姿すら見せない。これはゆで先生に忘れられたかというとそんなわけもないでしょうし、正直タイルマンやカレクックにも見せ場があったのに隠れた人気を持つペンタゴンが出ない理由は「後で見せ場があるから」以外に考えられません。……となると、二回もかませにされたジェロニモがひたすらに可哀想なのですが。
 そして対戦相手になるであろうジャック・チー。一件蛇口超人というわけのわからないタイプですが、こいつは戦いが始まってから特に必要でもないのに空を飛んでいます。これはアクロバット超人選手権のタイトルホルダーであるペンタゴンとぶつけるにおいて、空を飛べないのは不利になるし完璧超人の名折れにもなるから、今のうちに飛ばせておいたという推測ができるのではないでしょうか。もちろん、超人は皆空を飛んでいたから今更気にするものでもないというツッコミはありますし、新シリーズで久しぶりに空を飛んでいたので設定が無かったことになったわけではないとわかったのですが、それ以降も空を飛べるはずの超人はみんな地に足着いているので、超人は恐らく舞空術があまり得意ではないものがほとんどなのでしょう。ペンタゴンのように「鳥人」と言われるぐらい得意でないと、戦いの中で飛行を活かせないから飛んでいないのでしょう。その辺り、ジャック・チーは完璧超人ですから飛行も完璧なんでしょうね。
 ジャック・チーとペンタゴンがぶつかるであろう理由はもう一つあって、ジャック・チーはその名の通り蛇口から水やお湯を出す能力で戦っていますが、その際には必ず自分の蛇口をひねっています(腹の蛇口は飾り?)。これはペンタゴンがクロノス・チェンジやストップ・ザ・タイムを行う際に自分の顔面の☆を回転するのに合わせているからとは考えられないでしょうか。かつてペンタゴンキン肉マンに☆をひねられてクロノス・チェンジを逆発動されて敗北しましたが、ジャック・チーも同じように蛇口をひねられて逆転されたり、あるいはペンタゴンの弱点をジャック・チーが突こうとしてペンタゴンが何らかの対策を打っている、といった展開が予想できます。
 そして、ペンタゴンが参戦する理由が「ブラックホールがピンチだから」以外に考えられないというものがあります。アイドル超人入りしていなくてもタイルマンのように出番があったりする新シリーズですから、ペンタゴンが出る理由は十分にあるのですが、しかしアイドル超人でない以上ロビンマスクラーメンマンに混じってしれっと参戦するのは不自然ですし、アイドル超人じゃないのに一人だけ立ち上がってやられるのはしょっぱいですし、ましてや善戦したらジェロニモの立場がますますありません。すると、かつてタッグを組んだ相方であるブラックホールが重傷にもかかわらず連戦することで、「やっぱり連戦は無謀だったか」という空気を作るぐらいでしか出るタイミングが無いのです。負傷なんかは話を跨いだらしれっと治っていたりするキン肉マンの連載において、ブラックホールに前の戦いの傷を丁寧に残していたこと、それ自体が助っ人フラグというわけです。


 それでもペンタゴンが「出ない」というパターンも実はちょっと考えていました。なぜなら今回のシリーズのテーマは正義・悪魔・完璧の対立であり、ペンタゴンは正義超人であってブラックホールは悪魔超人です。ですから、かつてタッグを組んだとはいえ、ブラックホールがピンチになっても「正義超人の手を借りるぐらいなら死を選ぶわ、カカカー」ぐらいは言うんじゃないかという予想が私の中でありました。もちろん、バッファローマンが正義と悪魔をフラフラしてるところに四次元殺法コンビの絆を見せることで、超人としてのお互いのあり方を説いていくという感動的な展開も考えられるのですが、そんな大事なことのきっかけが四次元殺法コンビで良いのかというツッコミもまたあるわけで、そんなややこしいことになるぐらいならペンタゴンを出さずにお茶を濁すという方法も十分に考えられたでしょう。
 しかし、今週の展開を見てまた別の流れに思い至りました。今週は恐らくペンタゴンが突然乱入してジャック・チーもろともブラックホールの中に入っていったと考えられます。しかも周囲は温泉の湯気で影が無くなるほど視界が悪い……これはつまり、外から見ればペンタゴンは参戦しておらず、試合自体は至高のブラックホールによるジャック・チーのリングアウト負けになりつつも、ブラックホールの中で人知れずジャック・チーとペンタゴンの戦いが行われると思われます。ブラックホールペンタゴンの存在に気づくでしょうが、そこで黙ってペンタゴンに感謝するのか、それとも自分も四次元空間に入り込んで共闘するのか、それとも正義超人の助太刀が悪魔六騎士辺りにバレて処刑されるかはわかりませんが、これが一番後腐れない展開ではないでしょうか。


 その上で一つ気になるのは、結局ペンタゴンは正義なのか悪魔なのかというところです。上の方ではとりあえず正義超人として書きましたが、ペンタゴンは実際どっち側なのかよくわからないのです。ペンタゴンが初登場した超人オリンピックは正義超人(と残虐超人)しか参加できないのでその時は確実に正義超人なのですが、後にブラックホールとタッグを組んだ時は性格も若干悪っぽくなっていましたし、その頃に作られたキャラソンでも「心には悪の華咲かせて」とか謳われて、「悪魔超人に影響されてグレたんじゃね?」という説が結構根強いのです。
 一方でそのタッグ編でははぐれ悪魔超人コンビであるアシュラマンとサンシャインが出場する際に「以前は悪魔だったという理由だけで参加拒否するのか」と言った件を考えると、バッファローマンが正義超人入りしているから何も言わなかったのと同様にブラックホールも悪魔から抜けて正義に転向したと考えられるのですが、今回の新シリーズでそれは無いということに落ち着いたと思われます。たぶん……。
 また、ブラックホールペンタゴンは実はいとこ同士という後付け設定があるのですが(だから正義と悪魔でもタッグを組めたんだとか)、じゃあその親世代はどうなのかというと、実はペンタゴンブラックホールの一族は元々悪魔超人であり、ペンタゴンはそこから抜けて正義になったはぐれものという設定があります(ちなみにペンタゴンの弟にエイプゴンという超人もいて、彼もペンタゴンと共に正義入りしたのですが、ペンタゴンウォーズマンに惨殺されたのを見て力を求めて悪魔に出戻ったという複雑な経歴の持ち主です)。
 また、週プレモバイルで配信されている小説「ディープオブマッスル」では、一族ではブラックホールのような黒い超人の方が異次元に住む「本家」であり(かの「バミューダ3」も本家の一族として登場します)、その一部が地球に移り住んで体が白くなり、異次元を操る力を無くした代わりに時を操る力を身につけたのがペンタゴンのような「分家」という風に設定され、子供の頃は正義も悪魔も無く交流していましたが、やがて争いと無くし人をまとめる力を欲した二人は、それを恐怖に求めたブラックホールとスター性に求めたペンタゴンという風に、お互いに友情を感じながらも正義と悪魔に別れたという流れでつじつまを合わせています。
 これら二つの「設定」は漫画の本編中では語られていませんが、どちらも共通するのは「悪魔超人ないしブラックホールの方がメイン」である事実です。つまりこのコンビはどちらかというとペンタゴンの方が異端とする説が強いと考えられます。そう考えると、ペンタゴンは「悪魔寄りの正義超人」であり、現在のバッファローマンが「正義寄りの悪魔超人」なのとは対照的な存在と言えるのではないでしょうか。


 「くそう… できればオレがかわってリングにあがってやりたい!!」
 かつて、ブラックホールが初登場し、キン肉マンとの試合が始まる時に観戦していたペンタゴンはこう言いました。この時は仲間思いなペンタゴンに少し感動したものですが、こうやってブラックホールとの関係性を洗ってみると、この言葉もまた意味深なものになります。先の「ディープオブマッスル」では、正義超人として成り上がって超人オリンピックのチャンピオンになれば、ブラックホールと改めて勝負ができ、正義超人の素晴らしさも説くことができたのに……といった悔しさも含んだ発言だったと補足されていますし、もしかするとかわってやりたいのはキン肉マンではなくいとこのブラックホールの方だったのではないかという解釈すらできてしまいます。
 ゆで先生がその場の勢いで考えていたからこそ、こんなに深読みもできる作品になってしまいました。だからキン肉マンは大好きです。
 続きは三週間後、それまでは名曲「ストップ ザ タイム」と、来月発売の41巻を読んで過ごすしかありません。