魔法にかけられて

 風野の頼みをほっぽって、映画観てきました。いえーい。私の映画好きは分かってくれてるだろうし、多少遅れてもいいよとか言ってたもん。


 実は私、お恥ずかしいことながら……、真面目にディズニー映画を観るの、これが初めてです。観なかった理由は、まあ「偏見」でしょうかね。メジャーどころを避ける、ちょっといい気になったオタクのような哀れな姿。笑ってやってくだせえ。
 で、「魔法にかけられて」とはどういうお話かと申しますと、実に古典的です。平和な国のお姫様(正確には姫ではなく、王子様に見初められた美女)が性格の悪い女王によって異世界に飛ばされ、王子がそれを助けようとして騒動が起こる……といった感じです。キャラクターや設定等も「今までのディズニー作品」をモチーフにしているようなところがあり、セルフパロディのような小ネタもあります。
 が、その「異世界」とは現代のニューヨークで、つまり実写映画です。平和な世界はアニメなのですが、異世界をくぐるとそこは三次元という物語なのです。アニメと実写の違いは、動物が言葉を喋れないという程度で、女王が魔法を使ったり毒リンゴを食べさせたりといった要素はそのままです。
 とにかくお気楽に生きてきたお姫様に、現代のニューヨークは新鮮であると同時に、衝撃でした。「王子様と出会って結婚、幸せな生活を送る」という人生しか考えていなかった彼女にとって、結婚に至るまでのお付き合いや離婚という「幸せの形」を初めて知ることになります。一方彼女を助けることしか考えていない王子様は、正直ピエロです。カッコいいはずの立ち振る舞いもニューヨークでは滑稽でしかなく、顔もどことなく三枚目に見えてきます。
 先に書いたように、物語的には見るところはありません。展開はお約束の連続ですから。が、それは全てアニメの世界でやってきたことであり、「実写」と「現代」で表現する事で新たな面白さが生まれています。実写パートがほとんどのこの映画ですが、撮影や演出的にはアニメ要素の方が強い印象がありました。
 だからもう、観ているだけで非常に楽しくなるように仕上がっています。要所要所で歌が入る等、ミュージカル映画でもあるので、ド天然のお姫様が歌とともに輝きだし、そのお姫様の心境が段々と変化していく様は、観ていて清々しいものがありました。元々、私がミュージカル映画好きというのもあるのかもしれませんが。あの「突然歌いだす(踊りだす)感覚」が理屈抜きで大好きなんです。


 しかし、ミュージカル映画を観る度に私は思います。モンティパイソンの映画も、本気でミュージカルしてたなあ、と。人生狂想曲とか特にそうで、下手なミュージカル映画より気合いが入っていて、しかもそれをネタで片付けてしまう様は、それはそれで清々しいものがありました。