今更ながら、ヤッターマンの主題歌の話

 昨日の動画の補足的説明になりますが、まあ動画を観なくても良いように書きます。長いですからね、アレ。でも面白いですから、興味のある人は観てくださいね!


 ヤッターマンがリメイクされるという話が上がり、主題歌「ヤッターマンの歌」をシーズンごとに歌手を変えて流そう、という風にまとまったのが、大元の話でした。なお、当初の製作側は「ヤッターマンの歌(以下、OP)」を流すのは最初のシーズンだけにしたかったようですが、それは山本正之さんが待ったをかけた形になります。
 そして山本さん自身は、歌い手を変えてOPを流す事に関しては、30年前のノリそのままで行くのには疑問を持っていて(この辺り、きらめきマンの教訓を踏まえているように思えます)、また新しいファン層の開拓であるとか、近年のアニメ主題歌の売り方を鑑みて、この案で了承したそうです。「若いアイドルとかに歌ってもらえば、新たな人気も出るんじゃないか」というのが、その時に出た双方の意見です。
 そして、ここからが問題。まず第一に、「ヤッターマンの主題歌を歌いたい歌手募集」の報がネット上に流れます。これは山本さんも「なんだそりゃ」の一言です。そのぐらい工面するのが企画、製作の仕事でしょうに。「若いアイドル」はどこ行ったの?と、山本さんは不思議に思い、抗議するものの、企画が出回った以上、差し戻しは迂闊にできないので、そのままになってしまいました。
 それとほぼ同時期に、山本さんの元にプロデューサーがデモテープを持ってきました。それがいわゆる「音屋吉右衛門」の歌うOPで、若いどころか、山本さんと同年代のおじさん。しかもアコギメインのしょっぱい伴奏。「やっぱり旧来のファンにもアピールしたい」とダブルスタンダードな言葉に首を傾げつつも、最近のアニメ業界ってそういうものなのかもしれないし、そもそも山本さんも貧乏なので今更変えられる程の権力も無く、そのままになってしまいました。
 そう、「そのままになってしまった」のです。デモテープだと思ってたアコギ伴奏は、実は本放送でそのまま流れるもの。作曲家とかアニメ制作側と綿密な打ち合わせとかは全部無しで、現場プロデューサーの判断で決定してしまいました。それが最近のアニメ主題歌というものらしいと聞いて、山本さんはすっかり気を落としてしまいました。


 んで、この辺りの経緯を山本さんが自分の公式サイトで公開し(現在は公開終了しています)、2chとか関係者とかのコメント欄が大騒ぎ、いわゆる「祭り」になりました。これが放送のちょっと前の話ですから、意見は大体「ヤッターマンを馬鹿にするな」の旧来ファンと「年寄りが今更未練がましいんだよ」の傍観派の二つぐらいだったと思います。
 そして、実際に放送が流れるとまた評価が変わりました。「こりゃ文句言うのも分かるわ」というぐらいの出来だったわけです。当然ベテランだから決して下手じゃないんだけど、「ヤッターマンの歌」と噛み合ってないノリの悪さ。しかも伴奏がしょぼいのは、子供向けアニメとしては致命的。せっかく楽しい歌なんだから、楽しいアレンジにしないと意味が無いのに、完全に独自の世界になっていました(アコギ伴奏が悪いとは言いません。適材適所という奴です)。
 おかげで、タツノコの公式サイトとかが炎上するというとばっちりを受けたり、最低な意味で話題になってしまったから「音屋版ヤッターマンの歌」は枚数だけなら大ヒットという状況。いろいろと不名誉な事件でした。
 それから、第二期からの主題歌は山本さんと顔合わせ、録音を共にし、納得のアレンジになりました。第二期を担当したのは男性5人+αからなるHIPHOPユニット「ET-KING」で、歌の上手さでは一歩劣りますが、歌うというよりは一緒に騒ぐような感覚が非常に楽しく作られています。ただ歌うだけでなく、ET-KING得意のHIPHOPのテイストも含んでおり、HIPHOPのノリが好きな人には本家よりも良いかもしれません。
 第三期は女性演歌歌手の「西尾夕紀」さん。当然よく声が通っているだけでなく、女性ならではの可愛さを全面に押し出した作りが気持ち良いです。こちらもやはり演歌をイメージした部分があり、ビブラートが印象的だったり、「小節の利いたヤッターマン」という新たな一面を開拓しています。なお、シングルには更にアレンジした「演歌バージョン」が収録されています。
 ……が、最初に大コケしてしまったおかげなのか、両方ともあんまり話題になっていないように思います。今回の騒動で山本さんの粘着なアンチが表面化した面もありますから、話題にする方がイカンという説が……私の妄想ですが、あるように思います。
 第四期は……今のところ不明です。来月になれば情報も入ると思いますが、期待したいですね。あと、実写版では山本さん本人が歌うらしいですから、こちらもやはり期待。全部出たら、また聴き比べてみたいところです。


 正直、もっと評価されるべきだと思うんですよ。そして、音屋吉右衛門も、ヤッターマンとしては悪かったけど、音楽性の高さは知る事ができましたから、やっぱり評価するべきだと思います。
 「ヤッターマンの歌」は、なんだかんだで名曲です。そして、作曲した山本さんも老害じゃなく、良識を持った大人なんです。でも、自分の名曲をないがしろにされれば、そりゃ怒ります。それなりの礼儀を持って当たれば、それで良かったと思うんですよ。なんだかなあ……。
 なお、補足の補足。一般に「ヤッターマンの歌」と言えば、初代と上述の三種類に加え、OVAタイムボカン王道復古」のOP「ヤッターマンの歌'93」の五種類だと思いますが、昨日の動画ではもう一種類、「ダンシング・ユーロ・ボカン版」なるものが登場しています。これは10年ぐらい前に出た、ユーロビートっぽいアレンジのカバー曲集で、歌手ではない声優さんが歌ってます。まあ、よくある「懐かしの主題歌カバー」とか「声優ブームに乗って作られたやっつけ」ではあるんですが(おかげで、それなりにレアです)、これはその中でも「タイムボカンシリーズ」に限定した曲集なので、ちょっと特別な位置にあるんじゃないかなあと思います。古谷徹の歌うゼンダマンとか、ヒーロー然として結構良いですし。