秘密の亜美ちゃん

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 『夕やけニャンちゅう』は教育バラエティです。アイドル業界を裏で操っていたりいなかったりする謎の毒舌ネズミに対し、新人や若手アイドルが「オーディション」と称した風雲!たけし城ばりの過酷なコースを突破し、ネズミに認められる事でランクを上げていくという構成で、突破率のあまりの低さと厳しさから業界内外から批判を受ける事もありながら、ところどころに知識問題や格言を散りばめ、何よりアイドルだって大変なんだと世間の厳しさを教える事で子供を持つ親にもアピールするという非常に欲張りな内容となっています。オーディションのあまりの難しさに、全てのコースを突破したアイドルは数える程しかいませんが、765プロ所属のかの有名なアイドル天海春香さんは突破こそできなかったものの絶妙のリアクションで会場はおろかネズミまでも湧かせたので、特別にランクを与えられて特番にも出演したという快挙を誇っています。なお、何故ネズミなのに「ニャンちゅう」なのかは、過酷な状況に置く事でアイドルの女の子達の本来の可愛さを引き出せないかと考えた制作スタッフが、可愛さの象徴とネズミへの対比として「ニャン」を付け足したものだと言われています……という内容を、風野君から「番組名考えて」と言われた時に妄想していました。
 言うまでもありませんが、元ネタは『夕やけニャンニャン』と『ニャンちゅう』で、アイドルの番組と聞いて真っ先に思いついた夕やけニャンニャンニャンちゅうを引っかけた形になります。姉妹番組の『夕食ニャンちゅう』も『夕食ニャンニャン』が元ネタで(これはマイナーですが)、たまごかけご飯はニャンちゅう伝説の回から来ています。


 そんな話は置いといて、今回は14話です。内容的には10話の続きとして観れば分かりやすいでしょう。そして15話と16話は既に出来ているので、そのまま観てもらえばより面白いでしょう。はい。今回はマイリストコメントでもちょっと書いたので、内容についてはそんなに触れません。が、先日の日記に対して風野君から「それは違うぞ」と言われたので、その話を少ししておこうと思います。
 曰く、「アイドルの性格を補間する方向では考えてない」との事で、どちらかと言うとGガンダム方式で書いてるようです。つまり、各アイドルごとに「一番弄ってはいけない部分」を考えて、それに沿った性格を再構成、本来のキャラクターとは多少逸脱しても良い、という大らかさで作っているそうです。その結果が「妙に理屈っぽいけど自由さは変わらない亜美」「歌に殉じてもジョジョネタには走る千早」なわけで、確かにこれは実際のアイマスとは全然違いましたね。ごめんなさい。弄っていけない部分を残していたから、「これはこれでアリ」と思えていたのでしょう。
 その上で彼が重視している会話劇についても、もうちょっと詳しい話をしてくれました。曰く、「行動するのは個人の思想の問題だから自由だけど、行動するに足る理屈無くしては動けない、端的に言えば『常識的感性を持つ』」のが本質のようです。14話で言えば、亜美が涼君を助けたいと思うのは亜美自身の考えですが、助けるに至るまでに「涼君の人となりを知る」「真と律子に相談して作戦を練る」という理屈が用意されていて、それを「無邪気なだけじゃやっていけない」という言葉に集約させています。確かに突然会いに行っても成功するかもしれませんが、視聴者的には「お互いに死活問題なのに、失敗したらどうするんだ」という不安感が付き纏うわけで、しかしこちらでは律子を通している事で、「もし涼君が拒否してもいとこの律子がなんらかの手を回しているだろう」程度には妄想できる内容になっており、視聴者は安心して観る事ができます(15話では逆に理屈抜きに動く愛ちゃんがいるのが好対照な感じですね)。
 私、先日ニコニコチャンネルでストライクウィッチーズ2の一話を観たんですが(無印は観てません)、内容が「一度引退した主人公が、戦友の危機に再び戦場に戻る」という感じだったんですね。その内容自体は良いんですが、その舞台が軍であり、主人公は予備役とはいえ既に部外者だったものですから、客観的に観れば「民間人がワガママで突然やってきて軍の装備奪ってどっか行った」という、非常に問題大有りな内容にも見えるわけです。整備してる人達も、なんかあっさり通しちゃうし。「組織・団体の厳しさ」を重視してない作風ならそれでも良いんですが、登場する兵器とか命令系統に気合いが入ってるところから見るに、どうもそうではない感じですし、「ああ、結局ただのパンツアニメか」という程度の感想しか出ませんでした。大体、最初から見せてるパンツにどれほどの意味があるものかよ……と、これ以上は話が逸れますね。
 ともかく、理屈は大事なんです。作中の説得力は、そのまま視聴者への説得力にも繋がります。勿論、過度の説得はくどいだけですし、「ただのパンツアニメ」で通したいのなら説得力に欠けていても許されると思います(対比として語ってるだけで、ストパンを侮辱してるわけではありません。たぶん……)。
 それと説得力で思いついたんですが、非常に説得力を作りにくい行動原理が一つあります。それは「誤解、見間違いに聞き間違い」といったものです。例えば恋するヒロインが、主人公と別の女の子が抱き合ってるのを目撃してショックを受けるというシチュエーション(実は倒れそうになったのを助けただけ、とか)、これは腐る程ありますが、その1シーンを見せただけでヒロインが女の子に対し攻撃を加えるとすると、ちょっとヤンデレ入ってない?とか思われてしまいます。それに加えて手を繋いでたりとか、一緒に食事をするとか、もっとイチャイチャしてるシーンを見せないとヒロインの行動に対して説得力が生まれません。そのヒロインが元々病んでる感じなら有りでしょうが、誤解や些細な間違いをメインに物語を構成すると、「早く誤解解けろよ」と冷めた感想を抱いてしまいがちになってしまいます。それでずっと続いてる暴想処女はすごいと思いますよ、素直に。


 とにかく、風野君は真面目なので、行動一つひとつにも理屈が用意されています。おかげで派手さには欠けますしちょっと長いんですが、動画は「確実な面白さ」があると思いますよ……て、なんかこの宣伝文句はちょっと前にも使った気がします。ともかく、観てね。