人は皆、中二病さ

 一昨日の話に「クドリャフカ」という単語が出ておりましたが、実は私、この単語に少なからず想い入れがありまして。
 文章力を磨こうという一面で以ってこの日記を書いていますが、実はそれ以前にも何度か似たような目標を持っていた事があります。その一つに「小説を書く」習慣がありました。内容的には御粗末なものではありましたが、文庫本サイズで何冊分か書きましたので、それなりに良い経験だったのではないかと思います。
 そして、その中にライカ犬とそのエピソードをモチーフとしたファンタジー作品がありました。大雑把なあらすじとしては、ライトノベル的な「異世界召喚もの」です。ありきたりですね。当時もそれは思いましたので、一捻り加えてありますが。
 主人公だけが召喚された「特別な存在」だというのはどうにも設定的に気に入らなかったので、召喚されるのは主人公だけではなく、「全員」にしました。設定としては、どっかの馬鹿な宇宙人が「真の理想郷を作る」という馬鹿げた目標を掲げ、宇宙のあらゆる星から様々な人種を召喚し、一つの未開惑星に集めます。そして何世代も重ねる事で、自然と優秀な人種だけが残るだろう……、という気が短いのか長いのかよく分からない計画を立てた、という筋書きで、つまり「作られた世界」です。しかも壮大な目標だけではなく、いろいろな人種の生態観察をしたいという変態集団でもあります。とどめにそいつらには統率力が欠片も無く、それぞれが勝手に適当に召喚して星のどこかに押し込んだのです。
 元凶の宇宙人は一応「人との交流」を目的としていましたので、召喚した奴等が最低限生きていけるようにはしてあります。脳波を利用した翻訳機と少々の技術力、そして居住空間を提供しました。それだけです。三メートルの巨人と六本足の犬型宇宙人が同居する町が、上手くいくはずがありません。
 主人公の少女は星の中では数少ない地球人で、その宇宙人と妙に波長が合った為に騙されて召喚されます。当然真実を知った時には怒りと悲しみが沸いてくるのですが、なにせ「波長が合っている」ものでして、「私もいろんな人と友達になりたい」とか言い出して、若い身空で旅に出るのです。要は知識欲の塊なんですね。
 ですが、若い女性の一人旅は危険です。旅立って次の町に辿り着く前にケンシロウばりに行き倒れるは、人種の違いを忘れて喧嘩のつもりが人を殴り殺すは、魅力的な男性に出会ったけど実は雌だった事に気づかずやばい事になるは、出された食事全てが食あたりになるはと、波乱の人生を送ります。
 さて、これだけでは不条理コメディに見えるかもしれませんが、展開自体はかなり真面目なものでして、「でも客観的に見ればギャグだよな」というテーマを忍ばせていました。つまりこの話の読み手は、そのまま元凶の宇宙人に通じているのです。自分で書くのもなんですが、捻くれ者ですね。
 そして、その少女の名が「頼花」でした。せっかくの召喚ものですから、地球初の宇宙に出た生物の名前を借りたのです。といっても社会主義者ではありません。むしろ長旅のおかげでいろいろな思想が混ざってしまい、共産主義的側面もあります。旅で出会う人々も皆が根本から違う思想を持っていますので、人に応じて態度を変える日和見主義者でもあります。東洋の風水の思想も取り入れており、宗教学にも通じています。ですが頼花はそれを深く考えません。何せ、あの宇宙人と同じ波長を持っているのですから。
 話が逸れました。そして、ここからが重要なのですが……、ライカ犬が可哀想だという意見がよくありますが、私はそれが昔からどうにも気に入らなく思っていまして。ライカ犬は確かに自分の意思と無関係に実験に使われたのですが、それが嫌なものだった、人間はなんて酷い事をしたんだと考えるのは人間の主観でして、ひょっとしたら楽しんでいたかもしれないじゃないかと思い、それを骨子として頼花のキャラクターを作りました。世界観と併せて考えるならば、野良犬だった頼花が召喚される事で少しだけ特別な存在になり、「旅」という訓練の中で段々と「惑星」という名の宇宙への適応力を高めていく、という感じです。結果、頼花はやたらとバイタリティの高い人格になりました。酷い目に合うのも一度や二度ではありませんが、それさえも乗り越えて楽しんでしまうタイプです。勿論、表面的にはごく普通の多感な少女ですがね。
 とにかく、そんな話を考えていたら、決してくじけず前向きに生き続ける彼女が、やけに気に入ってしまいまして。他にも書きたい話があったのと、当時実生活が忙しかったのがあって、長編を一本書いた時点で休止してしまいましたが、今でもよく思い出してストーリーの断片を考えたりしています。
 そんなわけで、私にとってライカ犬は結構重要な位置にいるのです。


 今ふと思ったのですが、この話に著作権のようなものはあるんでしょうか。いえ、別にどこかに投稿しようとは考えていませんが(一応書き上げてあるので、今すぐにでもできますが)、もしこれを誰かが見て、それにインスピレーションを受けて何かを作ったとしたら、なんか悔しいじゃないですか。