ままままきまき

 もえたんのラジオを聴いてますが、いくら作品の趣旨に沿ったものとはいえ、現役女子高生にガンダムWを薦めるのはいかがなものかと……、いや、私は好きですが。
 しかしこのラジオ、聴いてて微笑ましいです。ガンダムWの話題は正直アレなんですが、それで「ふじょし」だのなんだの盛り上がる二人は、「ああ、若いって良いなあ」と思わせてくれます。オタクの観点から見ればぬるい会話でも、普通の「女の子らしい」可愛さが出ています。……この聴き方も、作品の趣旨とは違う気がしますが、まあ気にしない。


 どうでもいいですが、私はガンダムWは結構好きです。キャラがどうのメカがどうのという「ガンダム」の枠組みで語るのは正直面倒なんですが、この作品は一番「ガンダム」していると思います。そもそもの「ガンダム」の定義自体が曖昧ですが、「なんちゃってリアルロボットアニメ」という感じで、私は観ています。
 まず、主人公達は、ガンダムを完全に「兵器」「道具」として見ています。愛着はそれなりにありますが、任務のためなら乗り捨てもするという潔さは正しい兵器の在り方です。その関係はお互いのガンダムパイロットにも言えまして、ビジネスライクな関係は任務の成功率を高めています。
 そして、主人公達とガンダムは超人ですが、それもあくまで個人としての超人でしかありません。敵のOZに対してはゲリラ活動では勝てても、大規模な戦闘ではあっさり負けたりします。しかも、所詮は個人ですから、長期戦でも負けます。
 しかも中盤では、ろくにガンダムが出ないばかりか、でんでん太鼓を背負った赤いのと青いのが主人公の乗機になっています。いわゆる洗脳や裏切りイベントならこういう展開もありですが、この場合はちゃんと自分の意志で乗っていて、それどころか新ガンダムに乗ってる人間の方が洗脳されてる始末です。なんだかんだで「正義の象徴」として君臨していたガンダムワールドに、明確な反逆を示しているんですね(悪のガンダムはそう珍しいものではありませんが)。
 そんな感じで、作品内でも作品外でも正義の定義を一度壊してから、皆がウイングゼロ先生の授業を一度は受けて、自分なりの正義を見つけ出します。そういう意味ではウイングゼロだけが「正義の象徴」なのですが、それでもカトルを惑わせてコロニーを幾つも消滅させた罪(惑わせた、というのは正確ではありませんが、便宜上)は消えていませんので、結果として泥沼の戦争が成立しているのだと思います。
 一方の敵組織も、個人単位で変人はいますが、内部分裂や裏切りなど、様々な問題を抱えています。更にはコロニーを平和的に取り込もうとしたり、一方でサンクキングダムを壊滅させたりと、それぞれの大将で目的が違っていて、なかなか複雑な戦争となっています(まあ、過程が少々あっさり気味なのですが)。
 ただ、この作品はあまり「戦争」をしているイメージがありません。それは、主人公達が基本的にゲリラであるという事と、敵組織で名前の付いているキャラが少ない事だと思います。ゲリラは鎮圧するものであって、個人に戦争を仕掛ける事はできません。一方で、OZ等には魅力的なキャラクターは少なくないのに、ほとんどが地味な顔立ちか、ツバロフ「技師長」みたいな情けない役職しか出てこないので、どうも個人同士で暴れているようにしか見えないのです。
 その結果が「今までに何人の人間が犠牲になった!」「知りたいか?昨日までの時点で99822人だ」の会話であり、多くが「なんか分からんけどトレーズ外道」という感想を抱きます。そりゃ、トレーズは覚えてるかもしれないけど、こっちとしては皆同じ顔だったもんだからなあ……。ここで、トレーズが今までに死んだ「名前付きのキャラ」を何人か挙げるとしたら、「ああ、酷い『戦争』だったんだなあ。トレーズもそれなりに苦しんでたんだなあ」と思えるのですが……。
 あの台詞では単にトレーズの我侭で皆が死んでいったようにしか思えません。勿論、それを狙っている部分も大いにあるのでしょうが、人の命は数の問題じゃないと思います。まあ、悲惨さだけは非常に伝わりましたが。
 ほんと、戦争なんてくだらないですね。それを教えてくれたガンダムWは偉いと思います。強引に〆。