棺担ぎのクロ

 きゆづきさとこ先生の「棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜」のドラマCDを買いました。聴く寸前までは「好きな作品のドラマCDだけど、メディアミックスの絡まないドラマCDって結構微妙なのが多いよなあ」とか思ってたんですが、ナレーションがバート先生だと聞けば覇王翔吼拳を使わざるを得ません。
 で、ナレーションは田中秀幸さんだったわけですが、バート先生でもキャプテンファルコンでもなく、バート店長のような大人の優しさと落ち着きある声でした(よく考えると、バート先生は店長とキャラが全然違いますよね)。元作品が童話のような雰囲気を持っているわけですが、タナカ本部長……じゃなかった田中秀幸さんの声は、それを良く表現しています。
 私が「ドラマCD単体は面白くない」と思う理由は、それが「音だけ」だからです。脚本が面白いのは勿論ですが、それが声だけのドラマに合っているものなのか、声優さんの演技はそれに見合うものなのか……、同じような話をアニメで観るよりも、粗が目立ってしまうのです。声だけだからといって誇張した演技をする必要はありませんし、情景描写を誰かに語らせるか「間」で表現するかも難しいところです。面白い話も、一歩間違えると非常に痛々しいものになってしまいます。
 他にも、例えば小説をドラマCDにするなら、「文章だけ」と「音だけ」という意味で相性が良いように思えますが、実際は文章ならではの表現と音声ならではの表現がそれぞれあるわけですから、文章→音声に単純変換するだけだと大失敗してしまいます。かと言ってストーリーを壊さないように再構成するのは非常に難しく、演出は成功しても細かいテンポが崩れてしまいがちになります。それぞれのメディアが持つ独特の「空気感」を考えなければなりません。
 これは思うに、メディアの規模が関係しているのではないでしょうか。漫画や小説を基本とすると、アニメは何ヶ月と準備期間を持った上で十三本単位で物語を作るわけですが、ドラマCDはほとんどが単品で、脚本を書いて演出を考えてアフレコをして……という作業を経てできるのは、せいぜいが70分ほどの物語でしかありません。そんな中では気合いを入れようにも、入れにくいのではないでしょうか。関わる人数の割には時間や予算をかけられないのではないでしょうか。
 私が今までに聴いてきたドラマCDには、演技は良くても脚本のテンポが悪かったり、元のストーリーを再現するあまり焦点がぼやけているものが幾つもありました。ドラマCD専門の脚本家や演出家というのはあまり聞きませんが、恐らくはアニメの脚本家の中堅どころが手がけるのではないでしょうか。声優さんも、有名声優や実力派ばかりを使ったものはあまりありません。主役級以外は全然聞いた事の無い人ばかり、というのもザラです。更に製作期間も、3000円程のCD一枚に何ヶ月もかけるわけにはいきません。実働期間はそう長くないと思います。
 そんな状況では、やっぱり微妙な出来になるのも已む無しなのかなあと思います(憶測ですが)。だからと言って私にはどうしようもないのが辛いところです。精々が、真先に買って次回作の制作費やアニメ化の可能性にかける程度でしょうか。


 で、感想を書くのを忘れていました。……面白かったです。くどくなくて。全体の雰囲気がゆったりとしていて、でもちょっとしたコメディも忘れない原作を、上手く再現していると思います。元々の世界観やキャラクターも分かりやすいので、制作の人達も入り込みやすかったのかもしれませんね。
 声優さんは、メインの四人は私でも知っているような有名な人で、脇キャラもほとんどは聞いた覚えのある名前でした。作品の性質上目立つ演技はしていませんが、それ故に神経を使うものだったと思います。
 バートの店長に関しては、まああまり出番は無かったのですが、それでも十分です。クロとセン、ニジュクとサンジュが街を旅立つ時、どこぞの酒場か何かで静かに働いているような、そんな感じの印象でした。わけ分からない話ですが、そういう事です。店長が店長単体としてなら、あの世界にも合うような気がするので、私的には全然OKさ。


 本当は今日F-ZEROの第一話を観直す予定だったんですが、ナレーターの人の名前を見た瞬間こっちに急遽変えていました。ええ、尻軽です。明日頑張ります。