やあ、R・田中一郎くんだよ

 先日風野が作った【ニコニコ動画】アイドルマスター 究極超人あ〜るより「やあ。」をなんとなく観ていたら、「やよいがあ〜るというのは実に正解だなあ」と思えてきました。
 以下、その理由を書きますが、アイドルマスターとは関係無い話ですので注意。


 R君は一件おとぼけキャラではありますが、決して怠けたりはしていません。彼なりに一生懸命なのです。ただ、それが物凄くテンポがずれているというだけで。漫画には「一生懸命なのに空回り」というキャラクターがよくいますが、それに近いものがあると思います。それ+天然系といったところでしょうか。
 塩沢兼人さんがベストキャストだと言われて久しいR君ですが、塩沢さんの演技を聴いているとよりその思いが強くなってきます。塩沢さん演じるR君は、単にのんびりしているのではなく、どこか不器用さを感じさせます。動作や言動だけでなく、感情もです。それは彼がアンドロイドだからなのかもしれません。
 しかし、ただ不器用なだけのキャラクターは多いですが、不器用なりに真直ぐな事をしているのがR君です。素直で純粋で、間違った事は言うかもしれないけど、決して嘘はつかないR君。だからR君を引っ張り回す鳥坂先輩にも嫌な顔一つしませんし(実際にはしていますけど、付き合い自体を断る事はありませんでした)、どんな事でも自分の大好きなご飯に結び付けて考えるのです。
 叩かれて首がもげても、関節技をかけられても、土木研究会に500円で売られても、アンドロイドである事を利用されても(インターバルタイマーの人とか)、絶対に断らずに「やあ。」としまらない顔をしたR君。周囲の皆もなんだかんだでR君が大好きなのは間違い無いですし、私もそんなR君と高画部が大好きでした。だからこそ、ラストでメカ成原に対し「許さないぞ」と言ったり、さんごのさり気無いアプローチにちょっと顔を赤くしたりという、不器用なりの主張や感情表現のシーンは感動的なものがあります。
 「究極超人あ〜る」はオタク漫画のはしりと言われていますが、ただのオタク漫画なら星雲賞を受賞したりはしません。R・田中一郎という一体のアンドロイドの、のんびりとした日常とほんの少しの成長を描いた優しい物語だと思います。自分の使命なんかあるわけもなく、ひたすらにご飯を食べて過ごすのどかなアンドロイド、これはSF世界には画期的な漫画だったのではないでしょうか。
 「オタクならこれだけは読んでおけ」とよく言われる究極超人あ〜るですが、実際のところは一般の人にも広く読んでほしいと、私は強く思います。漫画にいっぱい出てくるオタクネタは、結局のところ「分かる人だけ面白い」のですが、「あ〜る」の上手いのは、そういうネタはさり気無く入れられており、ネタに頼った構成ではない事です。それに、「そういうネタで皆が楽しそうにしているから、ネタは分からないけど面白い」という要素があります。「ばるぱんさーの変身ポーズ(太陽戦隊サンバルカンのネタです)」なんて今の人はほとんど知らないでしょうが、大の大人がそんな事をやってるという事実だけで十分笑えるのです。
 第一、これが描かれた当時は今ほどオタクパッシングが強くありませんでしたから(マイナーではありましたが)、ネタにも嫌味がありません。普通に「子供みたいにはしゃぐ大人達」の延長上という感じでしょうか。もう二十年も前の漫画ですし、ネタは古くなっているのですが、おかげで社会に認知されているような「古典」ネタが多くなっているのもポイントです(ていうか、ネタネタ書いてますけど、あんまりネタは多くありません)。
 なお、現代人がオタクを悪しき者として見る風潮は、この漫画が連載終了して二年後に起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(いわゆる「宮崎勤事件」)から顕著になっています。しかもこの事件、オタク的要素はあまり関係無いにもかかわらず、「犯人はオタク」とマスコミが書きまくったという、おたくである人間には忌まわしい事件なんですよね。これのおかげでオタクでない人がオタクを見下すようになってしまっただけでなく、オタク自身もどこか歪んだパターンを持ってしまったと思います。


 どうでもいいのですが、「オタク漫画」というものの定義は今になっても明確ではないと思います。オタクの定義自体が明確でない部分があるので当たり前と言えば当たり前なんですが。「なんかぐだぐだやってる」「分かる人には分かるネタが出てくる」辺りでしょうかね。後は、「登場人物がオタク」でしょうか。そういうのに該当しなくてもオタク漫画というのはありますしね。……結局、漫画をジャンル分けする事自体が馬鹿馬鹿しい行為なのかもしれませんね。




 最後に。
 昔はおかゆライスとかカレーフラッペとか作ってみたいと思いましたが、そういうのを作れるのは若いうちだけだなあと、この歳になって思います。この手の一発ネタは、若さゆえの過ちというか、「思い立ったら即実行」の力が無いとできません。