ダンシング・ユーロ・ボカン

 久しぶりにCDのレビューをします。アイマスのファミソン8BITにしようかと思いましたが、そういうのは誰かがやってそうですし、隙間産業を狙い撃ちするのが私の趣味ですから。


 ダンシング・ユーロ・ボカン。さて、これはどういうCDなのかと申しますと……、よく分かりません(笑)。
 いや、実際よく分からないのですよ、情報が少なすぎて。CDに記載されている情報から読み取れば、発売は97年。それだけ。時期が微妙ですし、パッケージも微妙……。そして公式サイトの類も存在しません。
 どうも、「アニカバー声優大集合、ノンストップリミックス」なるシリーズの第二段らしく、第一弾は「愛と涙と感動のメモリアル・アニメ・ユーロビート」なるもので、懐かし系のアニメを声優さんがカバーしたもののようです。そして、第二段が「ダンシング・ユーロ・ボカン」と、タイムボカン系オンリーのリミックスです。ちなみに、第三弾はなさそうです。
 前々から存在だけは耳にしていたのですが、実際に現物を見たのは初めてでした。そんなわけで聴いてみたのですが……、第三弾が無い理由が分かりました。これは「薄い」。いろいろな意味でケレン味溢れるボカン音楽を、全部同じフィールドに持ってきたという感じで、平均化されています。おかげで、良い曲もあるのですが悪い曲も目立っています。
 全部で十曲、曲の手前にDJ福ノ上達也さんによる曲紹介が入っており、曲と繋がってるような印象を受けますが(ノンストップですしね)、一応分離しています。出来不出来はバラバラですが、「ダンシング〜」と名乗るだけあってノリそのものは良いですから、アイマスMADとの相性は良いかもしれませんね、風野シュレン君。以下、曲目と感想。

 最初聴いた時「ん?」と思い、歌詞を見て納得。三番が「ドンと出て来いドロボー」になってます。ドロンボーじゃありません。おかげで歌詞の持つノリの良さが損なわれているという、ダンスアレンジにあるまじき大失態です。「(ワン!)」とか「アチョー!」とかの合いの手が無いのもインパクトに欠けており、全体的に消化不良です。神奈さんの歌自体は曲と合っているのですが……。

 緑川さんの声があんまり好きじゃないというのは置いといて。こちらは合いの手があるのですが、無い方がマシに思えるほどのヘナチョコっぷりです。声の弱いオシイ星人が合いの手を入れてる感じ、と書けば伝わるでしょうか。……ふと思いつき、自分で合いの手を入れてみたら意外と嵌りました。

 島田さんがノリノリです。原曲の持つ「親しみやすさ」「間抜けさ」をよく表しているのではないかと思います。ただ、少々ノリがコテコテすぎるので趣味は分かれるかもしれません。楽しさは伝わってくるのですが、なんだか馬鹿にされているようにも思えましたから。

 こちらもノリノリ。高木さんのマージョ様への愛(そんなものがあるかどうかは知りません)が伝わってきました。高木さんの声自体は少々軽いのですが、アレンジも軽めなので上手く合わさっています。

 ……これは原曲が悪い(笑)。歌詞の山本節が強すぎるおかげで、ユーロビートとの相性が……。富永さんの歌い方は、なんとかノリの良さを引き出そうと頑張ってるのですが、それも歌詞に負けてるように思えます。やはりこれは山本さんにしか歌えない曲のようです(原曲はきたむらけんさんですが)。

 シリーズの中でも、特に「カッコいいヒーローソング」になっている逆転イッパツマン。こういう曲は実に合います。森川さんの歌唱も、ヒーロー然としていてグッド。

 古谷さんの声がかなり落ち着いているおかげか、アレンジされているにも関わらず原曲に近い感じです。「ケンダマコルト!」の叫びも、数多くのヒーローを演じてきた古谷さんならではのカッコよさがあります。

 私にとってゼンダライオンというキャラクターは、実はよく分かりません。山本さんの演技は良くも悪くも山本さんそのものですから。この曲の中ではやや子供っぽくイメージされているようです。堀川さんの声の中ではかなり軽い方で拍子抜けなのですが、曲のイメージとしてはなかなか良いかもしれません。

 セレナーデとかマンボとかをユーロビートアレンジする時点で何か違うような気がしないでもないのですが……、まあそれは置いておき。これは曲の特性上、ほとんど原曲そのままです。リズムが増えている程度で、普通のカバー曲として楽しるのではないでしょうか。そして松野さんの声は、妙にエロい。

 こちらも原曲に近い感じです。というより、山本先生は自分が歌うか歌わないかで曲調を変えていましたから、山本節溢れるオタスケマンとかどびびぃ〜んセレナーデはユーロビートとの相性が悪いのでしょう。ただ、高戸さんの声はちょっと弱い気もします。特に最後の「デタマン」とか意味が分からない単語なんですから、もっと力強く歌っても良いと思うのですが……。


 というわけで、当たり外れが非常に大きかったです。アレンジの特性上、BGMとして流すのなら丁度良いかもしれませんが、「タイムボカンのアレンジ」や「声優さんのカバー」という目的で聴くと痛い目を見るかもしれません。第一、「ノリの良さ」で言うなら、原曲の時点で十分にノリが良いんですよね……。
 最後のヤットデタマンで触れましたが、「山本正之が歌う」「他の歌手が歌う」で大きく曲調が違っているのがボカン音楽の一つの特徴ですが、このCDではそれが顕著になっています。全部「山本正之だから」という理由でひっくるめて評価していた私ですが、そういう発見ができたのは新鮮でした。あと、いただきマンボがちょっと好きになりました。これは良いアレンジです。