死ぬからこそ、生きよう

 アイドルマスターMAD、通称ニコマス業界は本当に広いものです。あまりに広すぎるから、いつかこんなことも起こるだろうし、それが見つかるのもありうるだろうと思っていました。
 ニコニコ動画の初期から広い範囲で活動なされていた桃邪気Pが、亡くなられたそうです。
 私がアイマスを知ったのは7月ぐらいだったでしょうか、詳しい時期は覚えていないのですが、手当たり次第に動画を探していたのがあの時期だったと思います。そこで観た中に、声優さんのインタビュー動画がありました。何の気なしに観ていた私ですが、それを投稿している人が全員同じ人「桃邪気P」だったと知ったのは暫く経ってからのことです。
 それから風野にも薦めて、私もお気に入りのPを何人か見つけて、やってきたのがMASTER ARTISTシリーズ(私が知った頃と同時期のリリースだったでしょうか)。ラジオで新曲が流れる度にジェバンニがやってきて優れたMADが作られていく様は、「最高の販促だなあ」と観ていたものです。
 そして、その中にあった三浦あずさの新曲「隣に…」は特に印象的でした。元々良い意味で「アイドルっぽくない名曲」で驚いていたのですが、一人のPがそれに対してかけていた情熱にはもっと驚きました。それこそが、私が初期に観た桃邪気Pであり、凄まじい速度で流れ行く動画の波に抗い、なんと5回も修正版を投稿しました。
 ニコマスに対して上手い、と言うのは勿論ですが、それ以前に「すごい」と思ったのは、これが初めてだったかもしれません。変態的な情熱をかける紳士はいっぱいいますが、大真面目に同じ楽曲に取り組む姿勢に私は打ちのめされたものです(他の動画やPが不真面目というわけではありません。私の狭い体験の中で初めてだったという話です)。
 それからも、瞬発力のあるネタもありながら、渋い作りの動画が印象的だった桃邪気P。広く、「名前がある」世界だからこそ起こりうる事件。私も近しい人の死を何度と無く見てきましたが、こういった形で死を見たのは初めてです。
 ご冥福をお祈りします。