ヤッターマン

 「劇場で完結編」でも良いんですよ。TV版最終回で一旦の完結さえしていれば。イデオンとかは酷い終わりでしたけど、あれは打ち切りですけど、これは「当初の予定通り」ですからね。
 昨日のアレは、そんなやり場の無い怒りを適当に茶化したものです。ちなみに、かしましはずっと楽しんで観てました。でも最終話で大嫌いになりました。人間なんてそういうものです。


 今頃ですが、劇場版ヤッターマン「新ヤッターメカ大集合!オモチャの国で大決戦だコロン!」を観に行った感想でも。にしても長いタイトルですね。OVAの一話みたい。
 春の実写版が子供向けとみせかけて、「ボカンで育って大人になった子供達」への映画だったのに対し、こちらはリメイク版ヤッターマンの映画という事で、ほぼ純粋に子供向け映画です。なお、窓口で子供向けよろしくヤッターマンのサンバイザーを貰いましたが、いくら私がそういう被り物好きでも、てれびくんの付録みたいなものを付ける趣味はありませんので、とりあえず封印。
 映画の特徴として、旧作の時点で空気だったガンちゃんのお父さん「高田徳兵衛」が登場し、物語の舞台となる玩具の国「トイトイ王国」の王子プラモンと併せ、親子間の絆を一つのテーマとして構成しています。徳兵衛さんがちゃんと生きてた事にちょっと驚愕したというのは置いといて、考えてみれば、ヤッターワンからして徳兵衛さんの設計。つまり、ヤッターワンとは「強力な兵器」なのか「大きな玩具」なのか、あるいは「正義の味方」となるのか、使い手の意志で幾らでも変化するという、鉄人28号の時代から繰り返されてきた「正義のあり方」にまで突っ込んだ物語にもなっています。そして、ヤッターワンの対になる存在として、オリジナルの黒く凶悪なデザインのヤッターワンである「ヤッターゼロ」が登場し、「正義の味方ヤッターマン一号」と「ヤッターワンの制作者の息子山田岩之介高田ガン」の双方を描いていました。勿論、表面的には子供向け映画らしい「メカが一杯出てきて大活躍」といった娯楽要素が満載なんですが、正直「これ本当にヤッターマンか?」と思うぐらいシリアスな物語でした。実写版が「良い大人が馬鹿やってる」感覚でしたから、尚更に。
 ストーリーは、忙しくて王子とコミュニケーションが取れないブリキン王(声はヤッターよこづなの緒方賢一さん)に対し、大臣のパ・ズール(リュウ・スザクの森川智之さん)が反乱を起こし国を乗っ取り、更に「宇宙クギ」なる地球破壊爆弾の信管のようなもので世界支配を企みます。ヤッターマンは国の客人として、ドロンボーはパ・ズールの悪事の片棒をそれと知らず担がされるために王国に呼ばれ、一応ドクロリングの奪い合いもあるのですが、ヤッターマンは当然パ・ズールの悪事を阻止するために、一方ドロンボーは「悪党にもプライドがある」と反旗を翻し、最後は力を合わせて宇宙クギが打ち込まれるのを阻止する事になります。この辺りの「敵と味方が手を組む」展開はシンプルではありますが、それ故に燃えるものがありましたね。
 映画オリジナルのメカはヤッターゼロの他に、徳兵衛さんがトイトイ王国で制作したヤッターメカ「ヤッターコング」と「ヤッターココング」が登場します。これは要するに「ヤッターパンダ」「ヤッターコパンダ」と同じポジションで、主に国民の避難等のサポートで活躍していました。そして、正のヤッターワンと負のヤッターゼロの戦いに決着が付き、ゼロに「正義の心」が目覚めると、二つのメカが合体し、「ヤッターキング」にパワーアップします。これは旧作の「ヤッターワンの延長」のようなデザインではなく、その名の通り「甲冑を纏った王」をイメージした強そうな格好で、かなりカッコ良かったです。


 実写版とアニメ版。二つのヤッターマンの映画の本質は同じ、「娯楽映画」です。しかし、実写版は「かつてヤッターマンを観た人達」に向けたようなもので、云わば「大人向け」。一方アニメ版は深いテーマ性を感じさせながらも、純粋に「子供向け」。これはどっちが正しいのかと問われれば、どちらも正しいものだと思います。何故なら、ヤッターマンは子供向けでありながら妙に大人に支持される要素を持っているもので、それでいてどちらがメインというわけでもない、不思議なバランスの上に成り立っているアニメだからです。
 ただどちらにも言えるのが、「ヤッターマンは長編に向いてない」という事実。映画という「スケールの大きい話」は途中でダレる可能性が高く、ギャグにしろシリアスにしろ、30分のテレビアニメをアドリブで進めたからこそ面白かった面があります。これがものすごく不安だったのですが、いやはやなんとか無事に終わりましたよ。素直に面白かったです。


 さて、サントラについても話をしておきましょう。ベラボーから出た劇伴とボーカル曲集は、基本はテレビ版の劇伴をアレンジしており、生音が減っているのか音が冷たい印象を受けましたが、まあ可も無く不可も無くといった印象でしょうか。ただ、ヤッタードラゴンのテーマ曲が「燃えよヤッタードラゴン」という、どこかで聞いたようなタイトルになっており、実際どこかで聴いたような曲調だったんですが、これは大丈夫なんでしょうか(笑)。
 で、感想が素っ気無いのは、ボーカル曲の「ヤッターキング2009夏!アニメ」の印象が強すぎるからです。劇場ではヤッターキング誕生の時にかかるのですが、これがすごく燃え上がります。山本正之さんの変わらぬ歌唱に加え、「ブル、ドジラ、パンダ、コパンダ」の呼びかけが「ドラゴン、モグラ、コング、ココング」のリメイク版仕様に変わっており、「ヤッターココングってのが出るって事は、やっぱりヤッターキングで歌詞が変わるんだろうなあ」と予想できていたにも関わらず、本当に燃え上がりましたよ。ヤッタージンベエは……まあ戦闘メカじゃないし、仕方ないね。
 他に「天才ドロンボー」のトイトイ王国版もワンコーラス分が収録されており、ヤッターキングと併せカラオケも入っています。ふと「これを使って新版のヤッターキングのボーカルだけ抜いて、旧版のカラオケに乗せたらカッコいいかなあ」と思ったのですが(昔の生音はやっぱりカッコいいですからね)、よく考えたら旧版ヤッターキングのカラオケは何故か山本さんの声が入ってたりして、カラオケ音源としては非常に残念な出来になっているのでした。仕方ないね。


 なんとなく、これからの予定も書いておきます。ヤッターマン最終話は、マサユキストなら絶対チェック。あと、実写版の挿入歌「ヤッターキング2009」は、10月7日発売のクロマニヨンズのシングル「グリセリン・クイーン」の初回限定盤のみに収録、だそうですよ。