けいおんの呪い

 昨日の話ですが、ハガレンの映画を観に行ってました。ピンポイントに津でだけ上映しないので、早起きして鈴鹿まで走って行きましたよ。
 なお、今日は事情によりハガレンの感想は書きません。


 鈴鹿に着いたら結構な人数が並んでいました。さすがハガレン、人気作だしコミックスがオマケにもらえるらしいし大変だなあと呑気に考えて私も列に混ざったんですが、どうも雰囲気が妙です。ハガレンは割と子供や女性にも人気のはずなのに、並んでるのは圧倒的に成人男性ばかり、漠然と聞こえてくる単語もどことなくオタク臭く、初日の初回から並ぶぐらいだからやっぱり筋金入りが多いのかな?と考えていたら、なんとその列はハガレンとは全く関係ない、けいおん!の劇場版の前売り券を入手するための列でした。どうやらたまたま同じ日に販売開始だったようで。……超紛らわしいんですけど。
 確かに列は二つあって、片方がその「オタク臭い列」、それともう片方に割と年齢層も性別もバラバラの列ができていて、私が並び間違えたのが悪いのかもしれませんが、列整理している人が「こちらがけいおんの列です」等と、『入り口に向かって右』等のわかりやすい解説を入れずに「あちら」「こちら」だけ叫んでいるものですから、余計混乱してしまいます。
 そんなこんなで入場開始。気付いたのが割に早かったおかげで、出遅れはしたもののまだ席に余裕のありそうな形でチケットを買えるかなあと思っていましたが、ふと周りを見ると「チケット入れ」と思しきものを手に持った人ばかり目に付きます。私は買いませんでしたが、ハガレンには前売り券もあったので、恐らくそれなのでしょう。しかしその時の私は朝早くから隣の市まで走ってきた疲労と、そもそもあんまり寝てない状態だったのであまり頭が働かず、何故か「ハガレンは人気作だから前売り券を持ってないと観れないんじゃないか」「当日買う人は別の列に並ぶんじゃないか、あっちにもう一つ列ができてるし」という不安に駆られ、ここは私の来るところではない、もう一つの列に並ばなければと外に出てしまいました。当然その「もう一つの列」はけいおんの前売り券の列だったんですが、それに気付いたのは列を抜け出して三秒ほど経った後でした。今更「すいません、寝不足でバカで哀れな私をもう一度入れてください」と言えるわけもないので、仕方なく最後尾に並びなおしました。
 結果、取れた席は一番後ろの端っこという、とりあえず画面全体を見渡せるんだから救いがある席でした。初回に観れたのは本当に感謝しなければなりません。しかし疲労回復も兼ねてポップコーンを貪りながら上映を待っていると、またどこかで見たようなアニメキャラが上映前の注意事項を教えてくれるではありませんか。最近の映画館では近日公開の作品に関連するキャラクターが注意してくれるといった映像(マナー向上CMって奴ですか)があるのは私も知っていましたが、なんと今日からそれはけいおんキャラの担当になっていたのです。

     ,ィ, (fー--─‐- 、、
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   N {                \
  ト.l ヽ               l
 、ゝ丶         ,..ィ从    |
  \`.、_  __ ,. _彡'ノリ _,.ゝ、  |         ∧
   `ゝf‐ゞ゙ujヾ二r^ァuj< y=レヽ.     l\ /
.    |fjl、  ̄.リj^ヾ.)  ̄  ノ レ リ   __|  `
    ヾl.`ー- べ!゙‐ ` ー-‐'  ,ン    \   時空を超えてあなたは一体何度――― 
      l    f,.ニニニヽ u /:|   _∠, 我々の前に立ちはだかってくるというのだ!!
       ト、  ヽ.__.丿  ,イ |     /  放課後ティータイム!!!
     _亅::ヽ、 ー   / i :ト、    ´ ̄|
  -‐''「 F′::  `:ー '´  ,.'  フ >ー、   l/、  ,ヘ
    ト、ヾ;、..__     , '_,./ /l       ∨
   ヽl \\‐二ニ二三/ / / 

 ここまでけいおんにコケにされてしまったら(半分以上無関係)、普通けいおんを嫌いになりそうなものなんですが、私はここでむしろ興味を持ちました。アニメ版はどうも面白いと思わなかったのでほとんど観ていないのですが、それでもけいおん!というアニメがある種の社会現象になっていて、非常に「売れた」という事ぐらいは知っています。そしてアニメの内容が、全体にふわふわとした時間を描いたものだという事も。
 そういう「売れるもの」を劇場版にするのは、製作者としては当然の事でしょう。現に前売り券でいっぱい稼いでいますし、もう少しメディア展開を続ける口実にもなりますし。しかし、正直けいおんは映画という媒体に致命的なまでに向いてないと思うのです。当然映画はスクリーンが巨大な上、テレビを付けるだけで観れるアニメと違い、能動的にお金を払わないと観れない以上、解釈の仕方はあれど「豪華なもの」にしなければなりません。しかしけいおんは「ふわふわ時間」のアニメであるはずです。一応バンドシーンが盛り上がりとして活用されていますが、それは日常の延長でしかなく、がっつりバンドに打ち込むお話でない以上、盛り上がりすぎると不自然になってしまいます。それを観るファンとしては幾らでも盛り上がって良いんですけどね。
 もちろん、映画は盛り上がらなければならないというわけではありません。ひたすらにゆったりとした日常やなだらかな変化を丁寧に描いた作品もいっぱいあります。ドキュメンタリーや実験映画の類になるともっと地味な構成になったりします。「いのちの食べかた」等はその極致でしょう。映画を観る人にもいろいろいますから、例えば仕事帰りにレイトショーでなんとなく映画を観るとか、そういう場合は派手なものよりも少々ゆるい方が心地好いでしょう。ですが、けいおんはそれともちょっと違う雰囲気があります。キャピキャピした女子高生は、疲れた体には割と腹立たしく感じますから。
 大体、女子高生の日常を仮に描くとしたら、一話30分のテレビぐらいのバランスが丁度良いと思います。巨大スクリーンが無くとも女子高生の可愛さは表現できるでしょうし、プロでもない女子高生が全国の映画館で歌えとか言われたらビビりまくると思います(劇場版の唯達が女子高生かどうか知りませんが)。それに、90分だの二時間だのの女子高生の日常を中だるみせずにちゃんと描けるんでしょうか?「売れる」から作るのはわかるんですが、これが「面白い」ものになるかと考えると、どうもわからなくなります。
 私は前々から、京都アニメーションという会社は「売れる」ものを作るけどそれが「面白い」とは限らないなと考えていたんですが、今回の劇場版けいおんでそれがはっきりするんじゃないかと思えてきました。となると、観ないわけにはいきません。『日常』を途中で観るのを止めちゃったのが(ニコニコの配信が3日に短縮されたらうっかり観逃してしまい、それきりです)ちょっと申し訳なかったというのもありますから、前売り券は買いませんが初日初回に並んでみようと思います。……初回はさすがに無理かなー。