知らなかったではすまんぞ戸影

 次々と秘密が明らかになっていく3クール、36話「ハルカ」では、リュウ君のかつての恋人ミサキハルカが、実はミスキラーその人なのではないかという、想像も付かない展開が待っていました。……嘘です。ほとんど最初から知ってました。「分かってました」じゃなくて「知ってました」なのが辛い……。しかし、それでもハルカが何故現代にやってきたのか等、疑問点は多かったので、今回はなかなか重要なエピソードでした。
 いつの間にかクランクと友達になっているアリアス、その先祖は実はリュウ君の同僚のローズでした。物語はそこから始まります。リュウ君が事故に遭ってからもゾーダは暫く活動を続けていましたが、警察の罠にかかって強盗に入った店舗ごと冷凍刑になりました(さりげない描写ですが、何気にバイオレンスですよね。裁判とかもすっ飛ばしていますし)。しかしそこにはゾーダを個人的に追っていたハルカもいたのです。それに気づいたローズはハルカを助けようとしますが、罠にかけた犯罪者はゾーダだけではなく、そこから「巻き込まれた」といって一人だけ助けるのは難しく、まとめて冷凍刑務所に送られてしまったのです。そして、ゾーダはシャドー総帥の手によって蘇りました。同時にハルカも、ミスキラーとして蘇生したのです。
 一方ゾーダもまた、過去の事を思い出していました。自分が凍らされる忌々しい瞬間に見た、謎の女の姿。ミスキラーに似ているその女は「リュウの仇」と言っていたのです。リュウ君とミスキラーに何か関係があるのか……、ゾーダはまた新たな疑問と不信感を抱きました。
 このお話の面白いところは、ミスキラーの正体こそ判明しても、なぜわざわざシャドー総帥が戦士として蘇生させたのかは未だ不明なところではないかと思います。ゾーダは「過去の大犯罪者だから」という点で理解はできますが、ハルカはただの一般人です。わざわざ洗脳している暇があったら、バイオレックスの知能をもう少し上げる方が効率的でしょう。ハルカの唯一の特徴は、ゾーダのライバルだったリュウ君の恋人である事です。
 この話を深く読めば、リュウ君にはなんらかの秘密があって、それをシャドー総帥は知っているという事になります。そうでもないとハルカを蘇生させる必要がありません。しかも、リュウ君に秘密があるとすれば、ゾーダの存在意義もまた増大する事になります(ゾーダと増大をかけているわけではありません)。
 一つ謎を明かすだけで、物語の構造が大きく見えてくるにもかかわらず、まだ本当の謎は明らかにならない……、なかなかうまい構成だと思いました。


 なお、この話を以ってして「ルーシーがヒロインじゃなかったの?」と思った人が多かったようですが、私にとってルーシーは男臭いF-ZEROの世界に花を添えるためのキャラであり、誰かとくっ付くタイプではないと思います。それに、ビジュアル的にリュウ君とは少々バランスが悪いのではないかと。