トランスフォーマー(吹き替え)

 昨日に引き続きお休みしています。あとで怒られそうです。
 でも、昨日よりは調子が良くなったので、今日は日曜に観たトランスフォーマーの感想でも。といっても、日曜の時点で重要なところは軒並み書いてあるので、ほとんど追記ですが。


 実写作品でCGが暴れ回るという、まあアメリカではありがちな話ではありますが、今回のテーマは「侵略と共存」だそうで、強大な力のエイリアンに対する仮想ムービーでもあります。実際、サイバートロン(セイバートロン星)の面々は善人も悪人もそれぞれのキャラクターが出ていて、侵略ものにありがちな「無表情な機械」ではなく「明確な知性を持った生命体」として描かれています。
 ディセプティコンズ(デストロン)は人間を「自分達より劣った生き物」としていますが、侮っているわけではありません。小型トランスフォーマーであるフレンジーは人間の武器でも片付ける事ができますし、要領の良いスタースクリームは同じF-22の編隊に紛れて攻撃してきます。冒頭で基地を襲撃するブラックアウトやスコルポノックも、情報収集だけではなく「目撃者を消す」という目的で動いています。ただ、同じトランスフォーマーの方が手強いという理由でしょう、人間達との直接対決はあまりありませんでした。
 一方のオートボッツ(サイバトロン)は正義の軍人というわけで、こちらは人間に協力的な態度で接してきます。そのおかげで妙に人間臭い仕草も見られます。サムの家に集まって庭を荒らしたり家族に見つからないように隠れたりするシーンは人間そのままで、しかも文化の違う宇宙人である事がよく分かるシーンとなっています。
 そして、中盤以降に見られる両勢力の戦闘シーンは大迫力ですが、これもあくまで人間のバトルがそのまま巨大化したという風です。巨大ロボットやヒーローというよりは、近未来の装備を身に付けた特殊兵士達、という印象でした。人や車よりは巨大でも、ビルよりは小さくて、近代兵器なら人間の武器でも傷を付ける事もできます。血こそ流れませんが負傷描写も凝っていて、サイバートロン達の人間味(生物味)が増しています。
 また、旧作のファンや日本向けにいろいろな小ネタやギャグが散りばめられています。バンブルビーが変形して正体を現すシーンではサムが「たぶん日本製だ。……間違い無く日本製」と呟いています。現実的に考えるならば日本でもそんな機械は作れるわけがないのですが、やっぱり精密ロボットと言えば日本ですよね。また、ここだけに限らず、緊迫したシーンにも関わらずこのようなギャグを入れるという姿勢は、日本版ビーストウォーズの不条理さにも繋がるのではないでしょうか。
 また、バンブルビーが中古車屋に並んでいるシーンでは、元となったバンブルのビークルモード(黄色のビートル)も一緒に並んでいます。他にも、結構重大なシーンでへまをやらかしたり、リーダーの癖に統率がいまいち取れていないオプティマスプライムは、昔のコンボイを意識しているように思えます。これで「私に良い考えがある」とか言ってくれたら完璧だったんですが。もしくは、崖から落ちるとか。
 話題となったCG描写はさすがといった感じですが、あまりに自然すぎて意外に思えなかったかもしれません。勿論、CGで変身するシーンで鳥肌が立たなかったら漢じゃないと思います。しかしそれよりも、バンブルビーの連絡を受けてオートボッツが宇宙からやってきて、それぞれのビークルモードをスキャンして集結するシーンや、メガトロンの保管されている基地へ全員が擬態の車で向かうシーンなど、そのような「ストーリー上の盛り上がり」のシーンに痺れました。特に走っているシーンは、ただ種類バラバラの車が走っているだけなのに、「あの中には想像も付かないようなパワーが秘められている」という迫力が感じられます。他にも、ディセプティコンズが潜伏していたのを、メガトロンの居場所を知って集結するシーンなど、本当に手に汗握ります。
 ストーリーの方に触れますと、初めて車を買ったサム少年が好きな女の子を誘おうとして不慣れな事をしまくったり、でもバンブルビー達との交流を通じて成長していく様が実に自然に描かれています。あからさまな童貞坊やが、最後ではオプティマスと肩を並べる程の漢になっているんですよ。これはミカエラでなくとも惚れますよ。
 オートボッツとディセプティコンズとの戦いで、オートボッツ側はジャズが死亡、ディセプティコンズは圧倒的パワーのメガトロンがオプティマスを追い詰めますが、サムの掲げたキューブの力に耐え切れずに死亡しました。他のメンバーも軒並み死亡……と言いたいところですが、スタースクリームだけは明確に生きている事が描写されています。宇宙に逃げて、新たな戦士を引っさげて戻ってくるのか、F-22よりも強いボディを入手でもしてくるのでしょうか。
 また、スコルポノックは地中に隠れただけで、死体が確認されていません(尻尾だけ切られましたが)。バリケードはいつの間にかいなくなっていました。パトカーという(他の面子よりは)隠れやすいボディを持っていますから、そのまま地球に潜伏するのか、それともうっかり忘れたのかは分かりません。続編の制作は決定していますので、この三体の活躍は今から期待しておきます。他にも終盤では、キューブの影響で野良トランスフォーマーが大量発生していましたから、生き残りの一体ぐらいはいるかもしれませんね。
 アメリカ映画というと、最後の最後で「愛」が提示されてハッピーエンド……のようなものをつい想定してしまいますが(私の場合)、この映画ではサム君のキスシーンすら碌にありませんでした。ラストでやる事やっていますが、あれは侵略者から地球を守って平和になった証、もしくは少年の成長ととった方が自然じゃないかと思います。ただ、やってるすぐ傍にはバンブルビーがいるんですが、これも共存の証という事でしょうか。
 続編が日本で撮影される、という噂もありますが、まあこれはさすがに無いと思います。アメリカよりも日本の方がトランスフォーマーはミスマッチで「アリ」だと思いますが、あんな撮影ができるほど日本は大らかではないと思います。自衛隊アメリカ軍と違って、やたら対応が遅くなりそうですし、たぶん撮っても盛り上がらないんじゃないかと……。自慢じゃありませんが、「秘密組織」とかの単語の似合わなさでは、現代日本はトップクラスですしね。
 あるいは、トランスフォーマーがビースト戦士のようにミニサイズになるという手もありますが、そうなると一作目との絡みが難しくなりそうです。まあ、難しいほどテーマの描き甲斐があるかもしれませんが。それに、トランスフォーマーアメリカのものとはいえ、日本の協力無しでは作れませんでしたから、日本を軽く登場させるぐらいのサービスシーンは作る予定なのかもしれませんね。


 なお、私が観に行ったのは日曜日の午後で、なかなかに人が多かったです。親子連れが多かったのはまあ当然でしょうが、お父さんぽい人が一番気合いを入れて観ていた気もします。子供もアクション目当てで損をさせるようなつくりではありませんでしたし、娯楽映画として十分だと思います。ただ、帰りの売店でお母さんと子供がオプティマスのキーホルダーを買おうとして「これ良いもん?(=正義の味方?)」とかお母さんが聞いていましたが、さすがにそのぐらいは分かってあげようよ……。赤くて目立ってるんだし……。
 なお、何故か私の隣にはロボットやアニメとは無縁そうな老夫婦が座っていました。幅広い世代に愛されているんだなあと思ったら、中盤で出て行ってから帰ってくる事はありませんでした。内容を見ずに適当に観ようと思ったのでしょうか……。