超ローカルな話題

 友人がバイトから帰ってくると、いきなり私に対して言いました。「四日市って言ったら何?」
 一応三重県民ではあるものの、あまり四日市に対して知識があるわけではない私に対し、友人は生粋の四日市人です。どのぐらい生粋かと言うと、「四日市は名古屋の植民地なんだぜ」と毎日吹聴しているぐらいです。アホか。
 そして私が主に提示したものは、「大入道は日本一大きいからくり」「万古焼」「水沢のお茶は静岡の次ぐらい」「湯の山温泉」「長餅の笹井屋」「ジャスコというか岡田屋」「逆境ナイン映画版の決勝戦」「無敵超人ザンボット3の7話」……そのぐらいでしょうか。なんだかんだで、私も随分詳しいのではとか思います。「四日市ぜんそくは?」とか言われましたが、忘れていました。あと、湯の山温泉四日市市ではなく、三重郡菰野町らしいです。
 突然何を言い出すのかと尋ねれば、どうやら工場でのバイトは退屈極まりないものらしく、私が貸したCD等の音楽を覚えて口ずさんでいたようなのですが、おかげで最近山本正之先制に嵌っているとの事。
 そしてその中の一曲「名古屋はええよ!やっとかめ」を歌っていたところ(この曲は元々つボイノリオさんの歌ですが、山本正之先生の作詞作曲で、セルフカバーもあります)、唐突に閃いたというのです。「四日市バージョン作れないかな?」と。
 名古屋と言えば、「『地方』である事を自虐的に誇れる都会」として関係各所では有名ですが、その植民地である四日市市バージョンとなると、更に悲惨な事になるのではないかと思いますが、まあなんだか面白そうなので、私も考えてみる事にしました。以下、二人で適当に考えた歌詞です。歯抜けですが。


 名古屋の植民地とかコケにするけどよ、ゴジラキングギドラも来とるでよ(四日市ぜんそくで工業地帯が有名になったので、何度か舞台にされています。ザンボットも同様)
 ぜんそくが流行ってるとか言うけどよ、そんなのとっくに消えてもうたよ、たぶん(今でもコンビナートの辺りは結構酷いものがあります)
 ザンボットでは随分都会に描かれてたけどよ、実際は今でも拓けてない(都市部の上の高速道路という程には……)
 四日市はええよ、名古屋に近いがね(実際、ベッドタウンとしても使われています)
 四日市はええよ、お茶がうまいがね(ぜんそくの工業地帯と違って、内陸部は実に穏やかです)
 万古焼、大入道、湯の山温泉(上述。近鉄湯の山線四日市から伸びているので、四日市に入れても良いんじゃないかと)
 GO!GO!四日市!未来の県庁四日市
 やってりゃあよ、見てりゃあよ、天下を取るでよ!


 あなたは知っているか、大入道は日本一巨大なからくり山車だという事を!
 あなたは知っているか、スーパー「ジャスコ」の前身は、「岡田屋」という四日市の老舗商店だったという事を!(ジャスコになる際には、創業者は岡田屋の人ですが、他の商店との合併で誕生しています)
 あなたは知っているか、かつて四日市高校が甲子園初出場した時、どうせ負けるだろうと日帰りの用意しかせんかった吹奏楽部が、どんどん勝ち続けて優勝してしまった球児達を見て、慌てて宿と着替えを探したという事を!(怪しいものですが、友人情報。親戚がその当事者だったとか)
 あなたは知っているか、これだけいろいろとアピールポイントがあるというのに、三重県の県庁所在地は四日市市ではなく、鈴鹿でも伊勢でも松坂でもなく、津市だという事を!(四日市の方が人口も多いです)


 この辺で力尽きました。私には無理です。いろいろと。
 ちなみに、四日市が名古屋の植民地というのは概ね当たっています。元々四日市のコンビナートは名古屋と共に発展したものですし、東海道五十三次でいうところの四十四番「四日市三重川」でも描かれている通り、東海道の宿場町として栄えた場所です。名古屋弁だって三重弁とかなり近いですし、ほとんどそのまま通じます。名古屋県無しに四日市は語れません。
 ちなみにこの友人、何故こんな微妙なものに詳しいかというと、岡田屋及びジャスコ創業者の遠い親戚なんだとか(実際に会った事は無いそうです)。そりゃコネで将来安泰だね、とか私が囃したら、「そんなものに頼ったら死ぬ」とか言っていました。どう死ぬのか分かりませんが、とにかく頼りたくはないようです。まあ実際、会った事の無い人間が「コネ使わせろ」とか言った日には、恥ずかしさで死ぬと思いますが。


 もし友人の正体が分かったとしても、どうかそっとしておいてあげてくださいね。