風野シュレンはくじけない

 【ニコニコ動画】アイドルマスター 燃えよ少年ドラゴンズ!より「ベースボール」
 中日ドラゴンズ優勝記念動画だそうですよ。出来は置いといて、熱意は大したものです。
 ちょっと解説しておくと、「ベースボール」自体は山本正之先生のオリジナルアルバム「女神の自由」に収録されているんですが、これは2005年のDVDドラマ「燃えよ少年ドラゴンズ!」の挿入歌版です。ニューマスタリングされているそうですよ?
 そもそも「燃えよ少年ドラゴンズ!」って何よという人のために、この際軽く書いておきましょうか。


 そもそも2004年の11月頃、山本正之先生がタイムボカンシリーズで親交のあった小山高生先生に「『燃えよドラゴンズ!』を原作にアニメを作れないか?」と呼びかけたのが始まりで、元々少年野球の話のアイディアを暖めていた小山先生はこれを快諾、企画を煮詰めていったんだとか。……関係あるかは知りませんが、この時期辺りから中日は快進撃なんでしたっけ?野球にはとんと疎い私です。
 段々と話を進めていくうちに、「アニメではなくDVDドラマにした方が良いんじゃないか」「ナインには子役俳優を使わず、元気の良さを強調しよう」「主題歌は『燃えよ少年ドラゴンズ!』で、水木一郎さんに歌ってもらおう」のような話が出来ていったと言います。多少私の推測が入っていますし、どこまで本当かは分かりません(この辺りの理由は後述)。
 そうして出来上がったのが、オール美濃加茂市ロケで、弱小少年野球チーム「リトルドラゴンズ」がライバルチーム「リトルジャイアンツ」に特訓の末勝つ、という44分のお話です。登場人物はリトルドラゴンズのナインとその親の野球狂、女子高生監督に謎の覆面コーチ、野球好きの宇宙人など、一癖も二癖もある奴ら。
 特に「野球好きの宇宙人」というのはなかなかハジケたキャラです。語尾に「キュー」を付け、背中に巨大なボールの甲羅を背負っているのです。宇宙に広がる電波を拾って中日ファンになって地球にやってきたのですが、彼の星では一年が十三日ぐらいであり、なんと野球の知識は三十年前なのです(「燃えよドラゴンズ!」が出た最初の年です)。いろいろと地球は勝手が違うのか運動神経はゼロなのですが、誰にも負けない野球への熱意が皆の心を奮い立たせるラストシーンが印象的です。
 ちなみにその他の登場人物として、つボイノリオさんが友情出演で出ています。宇宙人がUFOでやってくる時の目撃者「ミネソタの農夫」と、クライマックスで突然現れてナインを励ます「謎の老人」の二役なのですが、これがまた非常に良い味を出しています。特にこの手の話にありがちな「UFO目撃者の一般市民」である「ミネソタの農夫」は、まず役名の響きがいかがわしさ全開で、しかもつボイさん自身がノリノリで演じているものですから、「もう野球の話なんて良いから、こっちの変てこオカルトドラマを見せてくれ」と思ったぐらいです。
 なお、その他の友情出演として、山本正之先生等と親交のある人が結構出ているみたいです。CDの解説書によると、審判の人がとまとあきさん、二階のおやじが甲本浩人さん(歌手の甲本ヒロトさんの本名ですね)、応援団には藤原いくろうさんが出ているようです。顔を知らないので私には判別できませんでしたが。この友情出演はCDのボーカル内の掛け声等のようです。


 さて、こっからはちょっとネガティブな話。
 このドラマ、私が観た限りでは、正直あんまり面白くないんです。しかも、「ノリきれない」つまらなさ。脚本や発想は良いのですが、役者や予算などがそれに付いて行かず、どこかちぐはぐになっている感じです。
 特に主役であるナインは素人なわけでありまして、野球のシーンは元気があって良いんですが、弱小で人手も足りない事を悩むシーンは棒読み全開(もしくは滑舌が悪い)でして、そのシーン「だけ」吹き出し字幕が付いている辺りから内容を察していただけるんじゃないかと。あれは演出じゃなくて、そうしないと話が頭に入ってこなかった(聞き取れなかった)から入れたんだと思います。
 第一、山本正之先生原案に小山高生先生脚本、水木一郎さんが主題歌を歌いと、「一見豪華」なこの企画にも関わらず、この作品の知名度ってどうよと言われると首を捻ってしまいます。たぶんこの話、「アニメよりもドラマの方が良い」の辺りは「そうしないと話が作れそうにない」みたいな企画の縮小があったんじゃないかなーと邪推したりしなかったり。
 第一、非常に低予算ぽい作りですし(宇宙人のボールの甲羅とか)、友情出演が多い=本職俳優を予算の関係で使えない苦肉の作、とも考えられます。ともかくそんな諸々の事情が絡み、熱意だけがどこか空回りしたドラマに見えました。
 話自体もいろいろなキャラクターや設定が用意されていながらも、ほとんど活かされていません。女子高生監督と謎のコーチ(正体は同級生の男子高校生)は初々しい恋愛模様を序盤で展開させたと思いきや、中盤からはそんなのどこ吹く風になっていますし、宇宙人の「三十年前の野球の知識」設定も74年版燃えよドラゴンズ!を歌う以上の意味はありませんでした。
 たぶん、設定の「無駄な部分」を考えると、二時間ぐらいの作品を想定していたんじゃないかなーと思います。多少詰め込み気味になるかもしれませんが、王道的設定を散りばめた感じからは長編映画もしくはDVDの雰囲気が伝わってきます。
 尤も、このドラマはあくまで「シリーズ第一作」らしいので、続きが出ればこの辺りの設定が消化されたりするのかもしれません。ただ、これは2005年の作品であって、もう二年経っているのに音沙汰が無いんですけどね……。小山高生先生は脚本家止めちゃったし、そうでなくとも来年からのヤッターマンに関わるかもしれないので、続きを作ろうとしても作れないんじゃないかなーと思ったり思わなかったり。


 なんだかフラフラした書き方ですが、情報が非常に少ないので書きにくいのです。私は大して気にしなかったのですが、ひょっとしてもう中日的には黒歴史になってるんだろうか……?
 とりあえず、中日が優勝したのですから、この辺りの話も補完されるとありがたいですな。