恋とスフレと娘とわたし

 お腹を壊しても映画は観る、それが私のジャスティス……というのはウソで、むしろ休んで暇になったから映画を観に行ったというフトドキ者です。平日の昼間の映画館はガラガラです……というのもウソで、あの映画館はいつもガラガラです。いつ行っても静かで映画館のおじさんの顔も覚えたし、自分の家の次ぐらいに落ち着く場所になっています。


 で、「恋とスフレと娘とわたし」。三人の娘がいる母親が主人公で、三女がなかなか結婚できなくて、夫がいない母親にしてみれば「私はもう良いけど、同じ道を歩んでほしくない」と娘の結婚相手を探して走り回る、というコメディタッチのお話。
 タイトルでなんとなく想像できると思いますが、母親はとにかく「恋愛」を至上としていていろいろとお節介を焼くという、ともすれば非常にうざったいおばさんです。ちなみに三女はベテランのパティシエールでルックスも良かったりのすごい人なのですが、笑い方が変だったり相手に恵まれなかったりで結婚し損なったという、行き遅れ一歩手前と言えば分かりやすいでしょうか。
 母親は出会い系サイトみたいので「娘の結婚相手」を募集して、お節介と取られないように素性を隠して娘に接近させ、ようやくひと段落したと思ったら、その話を横で聞いてた別の男が付き合おうとしたり、母親がその男の父親に惚れてしまったりと、いろいろごちゃごちゃしてきます。後半では隠し事もばれて娘との関係も悪化……などと短いながらも波乱の物語です。
 一般に女性の恋愛というとポジティブとネガティブの両面がありますが、この映画ではポジティブさを全面に出し、「恋に生きる女性はいつでも輝く」というような気持ち良さを表現しています。上述したように後半は結構ひどい状況になるのですが、それまでの話のテンポが良いので、落ち込んでもそれほど嫌な気分にならずに終結に向かっていきます。それに合わせたカメラワークやさり気ない演出も面白さを重視していて、複数の登場人物が複雑に絡むにもかかわらずすんなり飲み込むことができました。


 そして思ったのですが、同じコメディものでも、邦画と洋画では演出の質が全然違います。単にセンスの違いなんでしょうが、日本には漫画やアニメが強い影響力を持っていますから、そこから映画へフィードバックされたというのも考えられるような気がします。同じような内容でも、日本のものはどこか現実離れした(悪く言えば『浮いた』)演出が多いような気がします。気がします。
 個人的には、洋画のコメディの方が好きです。