ウォーター・ホース

 観たのは1日ですが、なんとなく書きそびれました。ちなみに公開初日だったんですが、人が十数人しかいませんでした。大丈夫かなー。


 「ウォーター・ホース」というのは要するにネッシーのことです。ネッシーの卵を偶然拾って育てる少年と、戦争によって少しだけ乱されるスコットランドの物語です。かの有名な「外科医の写真(『ドラミちゃん』でカワウソだと指摘された写真)」も出てきます。
 伝説によると、ウォーター・ホースというのは世界に一匹しか存在せず、オスでもメスでもなく、時期がくれば卵を一つだけ残して死ぬという、幻の生き物です。卵を拾った少年は父親を戦争で亡くしており(死んだと知るのは後半で、最初は単に出征していると思っています)、親のいない境遇を思い密かに育てることにします。名前は「クルーソー」。
 最初のうちは番犬に吼えられて逃げたり、風呂場の水に浸からせていたりしてなんとか誤魔化して育てていましたが、その生態が不思議なように、成長もまた不思議なものでした。一度に数メートルも成長するなど、隠して飼うことができなくなってしまいます。そして家の近くの「ネス湖」に放し飼いすることになります。
 しかし、巨大になってしまったクルーソーが見つからずにどうにかなるわけもなく、次第に問題になっていきました。いつもネス湖で釣りをしていたおじさん二人組が大騒ぎして、いわゆる「ネッシー騒動」になります。ちなみに、ここで二人組はハリボテを使って「外科医の写真」を撮っています。
 そしてもう一つ、敵に備えてネス湖には軍が控えていたのですが、大砲の試射やネッシー騒動で凶暴化したクルーソーが軍の船を襲い、潜水艦と誤認されてしまいます。やがていわれのない攻撃を受け、クルーソーネス湖を去っていきました。
 そして現代、ネス湖ネッシーの話をする老人。その近くの浜辺には、いつか少年が拾った卵が静かに眠っていました……おしまい。


 当たり前と言えば当たり前ですが、少年とクルーソーの交流が物語の中心になっています。その周りを取り巻く環境は、唯一の理解者である姉と住み込みの元軍人、突然やってきて平和を乱す軍、夫を失った上に軍との付き合いもしなければならない母など、時代を反映したものです。ラストでは軍の大砲を避けて、潜水艦用の罠を壊して消えていくクルーソーは、そういったあらゆるしがらみから開放された「未知の生物」の姿を象徴していて、ストレートなカタルシスを生んでいます。
 この話は「ネッシー」の部分だけで完結しているので、少年がその後どうしたとか、軍は何をしたのかとか、そういう話は一切ありません。「ひと夏の夢」のような感じでしょうか。「のび太の恐竜」と言えばもっと分かりやすいかもしれませんね。恐竜ハンターのような「明確な敵」が軍になっているおかげで物語の構造が変わっていますが。
 ただ、この話は面白かったには面白かったのですが、当時のスコットランドの情勢や、ネッシー騒動の始まりから終結までを大雑把にでも知っておかないと、本当の意味では楽しめないかもしれません。どうもそういう「ロマン」を題材にしたものは、ある程度波長が合うか、予備知識が必要な気がします。だって、ネッシー騒動で日本がしたことと言えば、「未知の生物と言えば『〜ッシー』」という、わけの分からない認識を植えつけられたぐらいですからね。
 勿論、十分に一般向けだとは思います。CGで描かれたクルーソーは実写版ピー助かと見紛うほどの愛嬌がありますし、ネッシー自体がもうファンタジーの古典ですからね。ただ、私の知識が貧弱だったせいなのか、感受性が乏しかったのか分かりませんが、どうも腑に落ちないところがあったという、そういうお話なわけで……。
 というより、日本ではピー助のイメージが強すぎるのかもしれません。少なくとも私は「『海外実写版のび太の恐竜』でも通用しそうだなー」とか思いながら観ていました。はい、不届き者です。