魁!!男塾

 私は子供の頃、大きくなったら、何になりたかったのでしょう?何がしたかったのでしょう?ふと、そんなことを思いました。
 こうやってゆっくり歳を取っていって、確実に分かったことが一つ。
 『「映画館の貸切」だけは絶対にしない』。そんな大人になっちゃいけないと思いました。
 何が言いたいかと言いますと、わざわざ四日市まで出て映画を観に行ったんですが、なんと私一人でした。数人で観る時よりも「寂しさ」の度合いがダンチで、自分は本当に生きているのかどうかすら分からなくなるほどでした。
 もう、どんなに出世して億単位のお金持ちになって映画が観放題になっても、貸切だけは絶対しません。心に決めました。


 で、「魁!!男塾」です。観てたのは私一人でした。
 昔の漫画を映画化するのは今更珍しいことではありませんし、ドラマ版の風魔の小次郎も熱心に観ていた私にとってはむしろ歓迎というものでして、「まあつまらなくても後悔はするまい」と思って行ったのですが、これが予想外に面白かったです。
 一言で言うなら、「わしが男塾塾長、江田島平八である!」のような映画でした。「男塾」に欠かせないハッタリと、それに見合う男気に満ちていました。アクションにも気合が入っていますし、それをどうやって魅せるかという演出もなかなかのもの。
 ストーリーは驚邏大四凶殺(きょうらだいよんきょうさつ)編までで(人数の都合で「三」になっていますが)、序盤のギャグで掴んだところに、「よくよく考えるとおかしい」怒涛のストーリー展開が畳み掛かってきます。ツッコミどころ満載なはずなのに、突っ込ませない……そんな娯楽映画でした。
 勿論主役は剣桃太郎ですが(役者さんは監督と脚本もやっています)、極小路秀麻呂のキャラクターが若干掘り下げられ、一般人の視点と「男」への成長の役割を持っています。この緩急の使い方が絶妙で、クライマックスでの喝魂旗(かっこんき)を持ち上げるシーンは素直に感動してしまいました。一方で男塾の代名詞の一つである「雷電」がいないのは正直痛いのですが……、そんなのが気にならないぐらいです。とにかくハッタリで突き進むので、途中からそういうのがどうでもよくなってくるのです。
 ただ、面白かったのは良いのですが、改めてどこがどうと言われるとちょっと困ってしまいます。映画の勢いが凄まじすぎて、うまく言語化できないのです。
 ただ、男塾名物の解説で入る千葉繁さんの声はもうちょっとはっちゃけても良かったんじゃないかなあと。「解説」は物語のテンポをぶった切って入っているわけですから、やりすぎるぐらいで丁度良かったと思います。脚本も演技も非常に気合が入っているので、なおさら。