転々

 今更ながら、観ていたので書きます。


 時効警察が大好きだった私にとって、今回の映画も非常に期待していたのですが、やはり期待していて良かった!非常に面白かったです。
 借金取りに追われる大学8年生の主人公(オダギリジョー)が、その借金取り(三浦友和)の言う「東京散歩に付き合ってくれたら借金をチャラにする」という言葉に付いていく、というような話。借金取りのわけの分からない提案については、「妻をうっかり殺してしまったから、警視庁まで行って自首する」との事。お互いに深刻な問題を抱えているにも関わらず、その問題を全く感じさせない飄々とした雰囲気、「間抜け感」とでも言いましょうか……、それのおかげで最後までスルスルと引き込まれてしまいました。
 東京をひたすら歩きながら、お互いの想い出の場所を行ったりするわけですが、東京ならではの面白さとして「すぐ景色が変わる」と語られていました。想い出の場所は既に無くなっていたり、ほとんど変わっていたりしていて、それぞれに想い出はありながらも、特別想い入れを描いたりはしないというバランスもなかなか面白かったです。時効警察でも見られた、妙なところへのこだわりもバッチリあって、観ていて飽きません。とりあえず、岸部一徳のファンになりました。
 それと、物語に結論を求めていない姿勢はなかなか面白かったです。警視庁で二人が別れた時点で話は終わっており、死んだ妻がその後どうやって発見されたとか、妻の職場ではどうなっていたとか、正に「転々」と物語が進み、終わっていきました。盛り上げるような演出もほとんどありません。それでも主人公の感情の微妙な変化や、借金取りの心境であるとかが伝わってきて、「ああ、そんな話だったんだ」という「納得」が残るのです。持論ですが、物語においては結論を出さずとも、納得してしまえば成立すると思っていますから、非常に心地よかったです。そういう細かい事を考えずとも、小ネタや脇役の動きだけで十分最後まで観れますけどね。


 しかし観ていて思ったのですが、こういう「笑い」は世間ではどの程度受けるのでしょうか?私にしてみれば絶対こっちの方が良いのですが……、一般に「名作」とか「人気作」で語られる映画やドラマ等では、どうも笑いが「くどい」と思います。特に井上敏樹さんが描く特撮とか。ていうか、これが言いたかっただけです。井上さん、子供向けだからってちょっとわざとらしいと思うんだ……。