立ち位置がすごく微妙。端っこに立ってるのに真ん中にいる気分

 風野君から面白い相談を受けました。いつもくだらない相談なら受けているのですが(カップヌードルはどの味が一番美味いとか、いつも五分遅れる人間に合わせて行動する事が如何に馬鹿馬鹿しいであるとか、心底くだらない話です)、今回はいつになく面白そうだったので、適当に書いてみます。以下、大雑把な流れ。
 風野「僕にアイマスを知らない友達がいるんだけど……、何か薦めるとしたらなんだろう?」
私『……自分の動画でも薦めたら?「平成タイムボカンの歌」とかすっごい良かったよ」
「そう言ってくれるのはありがたいけど、ごめん、そいつボカン知らん」
『じゃあ「やあ2」とかは?ネタ系だったら分からなくても笑えると思うけど』
「ごめん、そいつあ〜る知らん」
『……オタクじゃないの?(我ながら失礼な質問だ。まあ、アイマスを薦める時点でオタクだとは思うけど)』
「ギャルゲーオタク、かな?萌えアニメとかの食いつきは良い」
『じゃあ、アイマスなんて薦めるまでもないと思うんだけど』
「食わず嫌いが酷い性格なんだと思う、たぶん」
『(そんなヤツにモノを薦めるのね、君は……)とりあえず、好きそうな音楽のジャンル辺りから入ってみたら?』
「それは前にやった」
『どうだった?』
「返信が無かった」
 そういう人間には何を言っても無駄だと思ったのですが、どうしても薦めたい様子。そうだよね、君の性格からして、薦めずにはいられないよね。君は面と向かうと素っ気無い癖に、人との繋がりを何よりも大切にしている。そして、アイマスの遊び相手が私だけというのも、やっぱり寂しいだろうに。
 どうも深い話を聞いてみるに、そいつはかなり自分勝手な性格の様子。そんなヤツ、さっさと切っちゃいなよ、と言いたいところですが、それはあまりにつまらないので、いろいろと対策を考えました。幸いニコマス界隈には入門動画すら乱立しているという充実っぷりなので、相手がどういう段階まで知っているのか分かれば、後は動画のURLを貼り付けるだけで中毒患者の出来上がりという、蟻地獄のような状況へ。ぐへへ。
 が、それはあくまでこっちの事情。向こうから見れば、案外こっちの方がダメ人間だったりするのです。例えば、「返信が無かった」という話にしたって、風野が普段メールに返信していなければ、そういう状況になってもおかしくはありません。私はその辺りもたしなめておきました。


 ニコマスの業界は広く、狭いものです。MADがあまりにも乱立しているので感覚が麻痺していますが、「何がすごいのか」は、案外知ってる人にしか分からないかもしれません。ノーマルPVからどうやってMADを作るのか、あの過程を知っているだけでも、面白さが倍ぐらい違うと思います。編集ソフトの機能の使い方であるとか、知れば知るほど、「すごいMADのすごさ」が分かるという、不思議な状況になっているのがニコマス界隈なのです。
 言い換えれば、知らない人には自然すぎて、何がすごいのかちいとも分からないのです。昔、ユニットの衣装をバラバラして、違う衣装ならではの演出を盛り込んだ名作があったのですが、それがあまりにも合成が自然すぎた上、ノーマルPVの衣装はどれも揃っているからなのでしょうか、「これで衣装が同じだったら良かったのに……」と残念がるコメントがありました。今思えば釣りだったのかもしれませんが、私にも継ぎ目が見えないほどだったので、あながち誇張でもないと思います。
 それで、風野はどうも、そういう動画が嫌いらしいです。「すごさ」は誰にでも分かるから「すごい」のだというのが信条で、分かる人にしか分からない演出はできるだけ使いたくないとの事。勿論必要な演出なら使うのですが、それを全面に押し出すような構成にはしないとの事。ニコマス自体が閉じた空間である以上、せめて少しでも「開けた空間」を作っていたいのだそうです。
 なんか、アイマスMAD職人の端くれではありますが、本質的には昔気質の職人のような気がします。編集点が丸分かりだった、カセットテープやビデオテープの時代。主題歌を載せ替えただけが主流で、本編の映像を使えば「手間かかってるなあ」と思われた時代。「面白いが正義」だった、大昔のMADです。彼の本質はそちらにあるように思います。


 なら風野君。誰にでも分かる、「やさしいMAD」を作ってみようよ。そして、それをさり気なく薦めれば良い。「こんなのもあるんだ」と示してあげるのが、一番良い薦め方だよ。