プロジェクトXはツンデレ

 タイトルのままです。プロジェクトXツンデレです。


 突然ですが、ちょっと前に「プロジェクトX」のとある技術屋の活躍を見せられたんですが、これがもう全然面白くないのです。どちらかといえば技術そのものが必要なはずなのに、プロジェクトXって要するに感動を主体をしたドキュメンタリーじゃないですか(やらせとか誇張とかあったらしいですが、今回は触れません)。だからそんな苦労話を聞かされてもなーと鼻ほじってたんですが(誇張)、以前風野が「MADを作ってると、映像がどういう風に成り立ってるのか考えるようになる」とか言っていたのを思い出したので、お話としてではなく「映像作品」として観てみようと思ったのです。……今思えば、すごく失礼な行為ですね。
 しかし、私は映像の知識はちいとも無いので、田口トモロヲさんのナレーションを中心に観てみました。若い技術者や野心家がいろんな手を尽くして進もうとするも、予期せぬ事件で断念せざるをえない……そんな感じのストーリーがあって、そこを「○○、衝撃を受けた。」とか色気皆無のナレーションが畳み掛けるのがプロジェクトXの構成ですな。この「助詞を省いて淡々を喋る」のが田口さんの独断なのかNHKのノリなのかは分かりませんが、とにかくつっけんどんです。お前、まともに日本語を喋れんのかと説教したくなるぐらいに(失礼)。私が「面白くない」と思ったのは恐らくこの辺りのせいなんじゃないかと思います。
 「でも、こういう『面白みの無さ』がドキュメンタリーとしてのリアリティを生み出してるのかなあ」と思いながら観ていたら、ラスト付近にそれが一転しました。技術者の努力の結晶がとうとう完成してハッピーエンドになり、スタジオに当時の技術者を呼んでお話して、エピローグを語る段階になったのですが、エピローグだけナレーションがほんの少しやわらかくなっているのです。助詞がちょっとだけ付いていて、コミュニケーションを受け付けるようなキャラクターに変わっているではありませんか。
 「よく頑張ったな」とナレーションが言っているようでした。ぶっきらぼうな癖にちょっとだけ優しい、上質のツンデレのようです。
「そうか、ここが人気の秘訣か」
 私は気づきました(声に出そうになりました。アホか私は)。単なる技術屋の感動話では説明できない点はここにあったのではないかと。とにかく突き放すようなナレーションで淡々と進み、終わったら少しだけマイルドに。ナレーションからも見放され、味方のいない技術者達を応援するしかない私達は、その「ちょっとした優しさ」に救われるのです。「良かった、成功して良かった!」と。
 このナレーションの変化は結構微妙なラインだと思うので、普通に観ていたらきっと気づかなかったと思います。すごく得した気分です。馬鹿みたいな話ですが。
 しかし、このツンデレ的ナレーションは、「最初嫌だと思ったら途中で観るのを止める」という場合には対応できません。全部観て、初めて「良かった」と思えるものなので。そういう構成にするというのは、結構な勇気か、自信が無いとできないと思うのですが……。きっと、それ以外の部分で切らせない工夫があるんでしょうね。ナレーションがツンデレなら、どこかにデレツンがあるとか。