ニコニコ動画の端の芸術学

 あまりにも昨日がアレなので、今日は阿呆なネタでも紹介しておきますね。
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 ntmPの「My 刺突 漁具 [My Best Friend / アイドルマスター 替え歌]」です。
 いわゆる替え歌なのですが、このntmPは高い歌唱力や替え歌歌詞の秀逸さで高く評価されています。それも、何故か漁業や釣りに関するネタばかり歌っています。一連の魚シリーズはアイマスの企画名「PROJECT IM@S」に引っ掛けて「PROJECT UOM@S@(プロジェクト ウオマサ)」と呼ばれています。
 何故そこまで魚が好きなのか、何故そこまで海にこだわるのか、何故そんなに良い声なのか、毎回入る実写映像はどこから拾ってくるのか、数々の疑問があるのですが、なまじ出来が良いのでそんな事がどうでもよくなってしまいます。面白いから全部オッケーというヤツです。
 今回紹介したのは、XBOX360版からの新曲「MyBestFriend」の替え歌で、釣具の「銛」をテーマに歌っています。専門用語が多すぎて私にはさっぱり分からないのですが、いつの間にか解説コメント職人が張り付いていたりするものですから、ニコマス界隈の無駄な広さを感じさせてくれます。
 ちなみにUOM@S@は他にもあるのですが、個人的に一番好きなのがこの曲です。先月投稿された「my song」の替え歌「太公望」なんかは普通に感動できるほどの名曲なのですが、専門用語オンパレードの方が替え歌っぽくて良いと思ったのでこれを紹介しました。
 替え歌とは、MADが流行るずっと前から存在していました。「他人のものをいじる」というお遊びではMADの先輩とも言えるものですから、こういうネタは古典とも言えるでしょうね。
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 ちなみに、こちらが通常のMyBestFriend。ちょっと良い関係の友達を歌った曲ですね。何故それが相棒の銛になるのか……。


 ちなみに、ニコマス界隈の基本は「アイマスの映像に他の曲を合わせる」でして、映像を弄る技術を持った人は大量にいるのですが、意外にも音を弄ったり歌ったりという人は少なめです。MADを作るのは上手くても、歌うとヘタクソなんて人もいます。ダンスのリズムと曲の拍子を合わせればそれっぽく出来上がるので、音楽的なセンスはあまり必要無いのかもしれませんね。
 勿論マッシュアップやリミックスをメインに作ってる人も多いのですが、音に意識を使う人はVOCALOIDの方に流れているのかもしれません。そして、VOCALOID系で映像編集のセンスがある人は少数です。音楽を聴くだけならイメージ画一枚や簡単なスライドショーで十分ですし、VOCALOIDに映像はありませんから、当然と言えば当然ですが。ちなみに、ごく少数ですが、「VOCALOIDで曲を作ってアイマスMADを作る」という合わせ技の人もいます。
 また、アイドルの台詞を切り貼りして音程をいじり、無理矢理VOCALOIDのように歌わせた人もいます。「人力VOCALOID」と呼ばれるこの手法はアイマスが発祥ですが、「力技=ある意味誰でもできる」という自由さから他のジャンルでも使われるようになり、中には本物のVOCALOID顔負けの名曲もあります。


 話は逸れますが、どちらのジャンルでも平等に存在しているのが「絵描き」です。音楽に合わせた絵を描いて「アイマス紙芝居」といったストーリー風の動画にしたり、ダンスPVだけでは表現できない部分を一枚絵で補ったりという風に、絵はそこら中で使われています。勿論VOCALOIDでもそれは同じで、イメージ画を自分で描いたりする人は多いようです。
 「絵を描く」のは、高価な編集ソフトが必要な映像面や、それなりの知識やセンスが無いと厳しい音楽面と違い、練習すれば誰でもある程度は上手くなれます。勿論ペイントツールはフリーソフトで十分です。そういう作りやすさが「絵描き人口」の多さなのでしょうね。
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 その中で、一番強烈なのがこれ。
 ニコニコ動画には「プロの犯行」というタグがあります。素人がお遊びでやってるニコニコ動画に、どうみてもプロにしか思えない高い技術力を持った人間が現れた、あるいは本当にプロとして活動している人が投稿した場合にこういうタグが付くのですが……、この動画は全く逆で、「素人の犯行」と呼ばれています。読んで字のごとく、「素人がやらかした」動画に付くタグです。
 見るからにヘタクソなのは分かるのですが、あまりにも下手すぎるので、どこまで本気でやっているのかさっぱり分かりません。もし私なら、こんなヘタクソな絵は投稿しません。というより、作ってる途中で心が折れると思います。
 しかもこの動画のすごいところは、非常にヘタクソな割に、元動画であるPVの再現性は高く、最低限のキャラの描き分けはできており、しかもかなり枚数を描いています。正直、「ヘタクソ」と呼ぶにはあまりにも手間がかかりすぎているのです。そういうところに情熱を注げるなら、どうして絵のスキルを上げようと思わないのか……。部分的に微妙に上手いカットが入るのがまた秀逸で、ネタ動画としては非常にレベルが高く仕上がってしまっています。


 ニコマスって、どうしてここまで広がってしまったんだろう。時々、その広さが恐ろしくなります。いろんな意味で。