ヤッターマン

 風野君と一緒に観てきましたよ。ヤッター!と。
 結論から言うと、予想以上に面白かったです。少なくとも制作スタッフの気合いが入っているのは分かっていましたし、「ある程度」の面白さはあると踏んでいたのですが、杞憂でした。これは確実に傑作のレベルだと思います。


 冒頭はいきなり廃墟と化した街でドロンボーとの戦い。メカは旧ヤッターマンの第一話に登場したダイドコロンで、CGを駆使しながらも使いどころが上手いのか、違和感も少なく迫力のある戦闘シーンでした。この辺りから十分「いける!」という確信を持っていた私ですが(笑)、その後も実際にいけるシーンの連続でした。
 まあ詳しくは観てもらったら早い話なので端折りますが、一番心配だったのはキャスト。やはりアニメで染み付いた三悪のイメージは実写では足かせになるのではないかという、恐らくほとんどの人が考えていたであろう疑問ですが、これがなかなか。バーチャルとリアルの境界を上手く付いた形になっていました。
 まず衣装がパリッとしたアニメと違い、革等の質感を重視したデザインになっており、ただ立っているだけで存在感があります。しかし演技はくどくなく、「アニメの実写化」ではなく「アニメの人物が実際にいたら」というイメージを考えた感じになっています。ドロンジョ様は「女王様気質だけどどこか可愛げがある美人」、ボヤッキーは「セクハラ親父だけど本命はドロンジョ様」、トンズラーは「二人とは若干離れるけど絆は熱い」等といった基本的なラインを残した上でアレンジされており、それぞれが「アニメが原作」という事を忘れさせるようなキャラクターの持ち主になっています。
 で、ここまで書いて気づいたのですが、三悪の事しか考えてませんでした。確かにガンちゃんはカッコよかったしアイちゃんは可愛かったですけど、あいつらが魅力的なんだもん。仕方ないね。特にトンズラーのケンドーコバヤシさんはマジにカッコよかったです。なんというか、美学がすごい。


 一端話をリセットして、全体のイメージですが、これはリメイク版のヤッターマンはあまり関係なく(声優さんは同じですが)、旧版のヤッターマン、ひいてはタイムボカンシリーズ全体をひっくるめて映画にしたような感じにも思えました。それも旧作へのリスペクトというよりは、「楽しかったあの頃を再現した」と言えばしっくり来るような、そんな感じです。要所要所のディティールに旧作をイメージさせる要素もあるのですが、あくまで実写版は実写版でオリジナルという、不思議な懐かしさがありました。
 それと音楽。これはサントラを事前に聴いていたのですが、これもなかなか興味深い構成になっていました。なんというか、映画音楽というにはちょっと音が弱く、むしろ「豪華なアニメ音楽」にしてあるように思えました。
 そしてオープニングでかかるテーマはヤッターマンの曲ではなく、「ボカンで育って大人になって」のモチーフが使われています。他にも「ドロンボーのインチキ商売」は原曲の「ミイラとお姫様」のメロディがより多く入っている等、単に「ヤッターマンの映画版」という事ではなく、こちらも「30年間、あるいはそれ以上の楽しさを詰め込んだもの」に思えました。


 ああ、久しぶりだからなのか、それとも「想いの強さ」だからなのか、あんまり文章が書けません。とにかくこのヤッターマンという映画は、「今の映画」ではあるのですが、「今までの楽しさ全て」でもあると思います。勿論それは制作者の主観によるものが大きいでしょうが、ヤッターマンの、タイムボカンシリーズの持つ「楽しさの普遍性」のおかげで、すんなり入り込む事ができました。
 映画のテーマがどうのというよりも、「俺たちはこういうのが好きだ」と力一杯提示された気分です。で、私はそういう姿勢も好きですし、提示されたものも大好きでした。端的に言えば、ツボにきました。いわゆる「超大作」という感じではないですが(CG使いまくってすごいですが)、確実にヒットする面白い映画だと思います。


 「宝物を閉じ込めた秘密の箱」……この箱の鍵が、このヤッターマンという映画の中にあったような、そんな気がします。