A NEED Key

 なんで私はToLOVEるを楽しめるのにあねどきっを楽しめないのか、今週のジャンプを読みながら真剣に考えました。どちらも「健全な青少年の家に可愛い女の子がやってくる」、いわゆるおしかけ女房?もののコメディだというのに……。
 なお、私が姉に対する憧れを持ってないからとか、そういうわけでは決してないと思います。ラブプラスと同じで、人は誰しも「年上に憧れる時期」「年下に憧れる時期」「同年代に憧れる時期」があり、特に私は割とその日の気分で変わるので。どうでも良いですけど、ラブプラスGirl's Sideというか、「ナカムラス」が出たら絶対買いますよ。
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 で、画風の違いとか、SFかそうでないかという違いも勿論あるのですが、やっぱり一番大きいのは「主人公」ではないかなあという結論に至りました。川下水希先生の漫画全般に言える事なんですが、主人公もしくはそれに類するポジションの男キャラ、要はラブコメの中心にいるキャラに、私は共感できないのです。
 この手のラブコメの主人公はほとんどが「基本は真面目で当たり障りの無い性格だけど、女の子のちょっとした仕草にドキッとする」とか「普段は情けないけど、大事な場面ではしっかり活躍する」という、「平均の見本」のようなキャラクターに設定されており、今回の落合洸太君もそれに沿っています。これは当然です。ラブコメは女の子が可愛いのは当然ですが、その女の子が惚れる男の子に好感あるいは共感が持てない場合、読むのが非常に辛くなります。「この娘はこんなに可愛いのに、どうしてこんな男に惚れるんだ……!」と、血の涙を流す感じに。
 今のあねどきっの現状は、「謎の年上のお姉さんが同居してきた」に加え「その妹まで同居してきた」という異常事態になっています。ここで世の男達は「なんて羨ましい」と思うかもしれませんが、実際に「見知らぬ女が二人も家にやってきた」となると、普通は怖気づくでしょう。私だったら「この家を侵略されてたまるか!」と全面戦争を挑むか、「とにかく怒らせないように大人しくしておこう」と完全降伏するかのどちらかだと思います。
 で、ここで洸太君に共感できなくなっている自分を発見しました。洸太君は、見知らぬ女性二人に対し、余りにも無礼すぎるのです。かといって全力で同居を拒否するでもなく、実に嫌なバランスでフラフラしているのです。例えば先週分の話ですが、妹の方が正座してて足が痺れてると気付くや棒でつっついてこけさせるとか、健全な男子中学生ならやらないと思います。だって、既に同居して長い姉の方ならまだしも、その姉に対し「ご迷惑をおかけします」的にしっかりしたところを見せてやってきた、大切なお客さんなのに。これで例によってお色気シーンに持っていくんですから、「そんなにエロ描写が欲しいか」と思ってしまいました。
 実際「平均的男子中学生」って、かなり多感な時期だと思います。特に洸太君はちょっと前まで小学生だった中学一年生です。これは結構大事なところでして、大抵の中学は複数の小学校の学区をひっくるめた生徒で構成されていますから、「見知った友達」と「友達じゃないけど知ってる人達」に加え、「全く知らないグループ」が同時に存在しているのを見て、明確に「他」を意識する時期なのです(塾とか習い事のある子はそうではないかもしれませんが)。そうなれば、当然人との付き合い方も変化します。小学校では常識だったやり方も、中学校では通用しないかもしれないのですから。
 だったら、「見知らぬ高校生のお姉さん」とか、多少は嬉しいかもしれませんが、まず「恐怖」があると思うのですよ。その妹にしたって、洸太君にしてみれば年上ですから、やっぱり構えるのが常識的な反応だと思います。これでもし主人公が中学の頃の私だったら、表面的にはしっかり応対しても、精神的疲労で倒れる自信がありますよ。これが同い年の少女だったら、やっぱり距離を取ったとしても、何気無い点からすぐ打ち解けたりするでしょうが……。
 そうなると、その「同い年の少女」である桜井奏ちゃんがすごく可哀想。いくら美少女で皆から好かれていても、やっぱり中学一年生なんですから、それなりに他人に対する不安もあったと思うんです。それなのに、普段目立たない同い年の少年が自分を助けてくれたのなら、これはもう惚れるのも分かるというものです。なのにその少年の家には、「謎の年上美少女」が同居しているのですから、これを恐怖と言わずして何と言いましょう。
 しかし、こう考えると、「謎の年上美少女」がいつまでも謎のままなのがもう一つの引っかかるところのような気がします。これで正当な理由があって同居するのなら私も納得はできましょうが、素性が曖昧なまま進んでいますから、落合家にとっては異分子であり、常に不気味な存在であり続けています。「目的の分からない美少女」に心を許したら、何されるか分かりません。エロシーンに身を乗り出したら金を請求されたりして……というのはさすがに悪意のある読み方ですが、早く素性を明らかにするか、あるいは萩原家の様子を描いてくれないと不安でなりません。美少女姉妹(かどうかは知りませんが)が二人もいなくなったら、普通周囲の方で大騒ぎしますよ。


 で、じゃあなんで私はToLOVEるを好きになれるのか。これはもう同じ理屈で、主人公のリト君がすごく良い人だからです。無闇矢鱈と脱げまくる美少女達に対し、見ちゃいけないと視線を逸らしたりもすれば、女の子に危険が迫っていると分かれば自分も省みずに助けに行く(その結果エロシーンに繋がったりしますが、それはまた別の話です)。しかも、この場合の危険は宇宙生物とかの、想像もできないような危険なのに。これは春菜ちゃんやララちゃんでなくとも惚れますよ。良い人すぎて平均的な男子高校生のスペックをはみ出してる気がしますが、まあ良い人である分には読んでて腹も立たないので。
 あと、ララちゃんはすぐに素性を明らかにしてくれましたし、この手の漫画でありがちな「家にいない親」の存在も早めに明らかにされ、他の家族関係及び友人関係も良好等、とにかく読者視点によるストレスが徹底的に排除されている辺り、ToLOVEるはすごいを通り越してずるいぐらいです。
 ToLOVEるはSF設定のおかげで何でもできるという免罪符があるにもかかわらず(あるからこそ?)、キャラの性格や人間関係はすごく地に足が付いていて読みやすく描かれています。あねどきっはファンタジー要素が一切無い、地に足が着いた設定ではありますが……、まあ、もう暫くは期待しておこうとは思います。ToLOVEる亡き後、貴重なラブコメ枠を受け継いでいるのですから、しっかりしてもらわないと困ります。