世界樹小説を目指すもの「Triferon」015

 前回までのあらすじ、たぶんペパラーゼ以外は皆知ってた。


 わたしは今まで、じゅかいにはぐるぐるがあるとばかり思っていました。ぐるぐるするのは楽しいですし、わたしはそれがいちばん似合ってると思っていたからです。それで、わたしがいつも見つめていた「じゅかい」もぐるぐるでいっぱいだと思っていたのです。
 でも、さいきんそうじゃないことがわかってきました。
 わたしはさいきん、せやく院のキタザキおじさんに「べんきょう」を教えてもらっています。「べんきょう」というのは、わたしが「ぼうけんしゃ」さんを見て「いじゅつ」を覚えたように、いろいろな「じゅつ」を覚えることです。
 さいきん、いろんな本が読めるようになりました。「本」のおかげで、この街がなんでこんなに大きいかもわかりましたし、街の外にはどんなせかいが広がっているかも知りました。わたしが生まれるずっと前には、じゅかいよりも大きな塔が建っていたらしいとか、「よくわからないこと」もわかりました。
 そして思ったのです。これはぐるぐるとはちがう、べつのものなんだって。
 ロウタさんに聞いたら、
「ぐるぐるするだけが人生じゃありませんよ。自分のやりたい事をやりなさい」
 って、頭をなでてくれました。えへへ、ほめられちゃった。
 フィ=Irさんにも言ったら、
「ねえ、今度教えてよ。いろんな『術』をさ」
 って笑ってくれました。しょうがないなあ、とくべつですよ。えへん。
 ペパラーゼさんにも言ったら、
「それは『成長』って言うんだ。どこまでも長く長く、伸びていきなさい」
 ってたかいたかいしてくれました。よおし、いっぱいいっぱい伸びちゃおう。


 こんかいは、F.O.E.をたおしに行くことになりました。ナガタカさんは「この程度で生態系は崩れないでしょうし、かの獣自身の生態を知るには必要な行為だと思います」って言ってました。つまり、一つのぐるぐるを止めたところでいっぱいのぐるぐるは止まらないってことですよね。
 大きな鹿さんに、みんなが向かっていきます。ぞあすさんが鹿さんをまどわしたところに、ナガタカさんがほのおを飛ばし、めちゃくちゃにつっこんできた鹿さんをロウタさんが受け止めます。フィ=Irさんはいろんな歌でみんなを元気にします。わたしは……、あんまりやることがありません。
 これは、F.O.E.じゃないときもそうです。わたしが「おにょれー!」とか走って杖をふりまわしても、けものを追いはらうことだってできませんもの。こういうところも「せいちょう」した方がいいのかな。
「そんな事はありませんよ。ほら、わたしの怪我を治してください」
 鹿さんのぐるぐるを止めたあと、ロウタさんはみんなを鹿さんから守っていましたから、きずだらけになっていました。わたしはがんばってきずを治しますが、やっぱり、みんなといっしょにたたかえてない気がしました。
「あの……、わたしにもっとやることありませんか?」
「マスコットキャラはそこにいるだけで良いの!A・Yちゃん、君がいるからあたしは歌える。君がいるからロウタが盾になれる。周りの戦士はヘナチョコばかりだから君がいないとどうにもならないのさ」
「うにゃあ……」
 わたしはすなおによろこべませんでした。だって、わたしがいるからたたかえるって言いますけど、フィ=Irさんの歌みたいにすごいことじゃないと思うからです。


 大きな鹿さんの次は、大きな牛さんでした。みんなのやることはおなじです。そう思っていました。
 でも、牛さんの体当たりはすごく強くて、ロウタさんをそのまま吹きとばしてしまいました。わたしはなんにもわからないまま、ロウタさんのところに走ります。
「大丈夫、でずか……」
 ロウタさんは血をいっぱい流していました。牛のつのがよろいをこわして、そのはへんが体にささっていたのです。でもロウタさんはそんなことなかったみたいに、わたしのしんぱいをするのです。
「はい……、だいじょうぶです」
 わたしはそれだけ言うと、むちゅうでロウタさんを助けようとしました。牛さんが今どうなってるかなんてわかりません。とにかく、「しょうどく」して、はへんを取り出して、くすりも飲んでもらって、やぶれた体をつないで、ほうたいでまいて……。
「ありが、たう、ございます……」
 気が付いたら、ロウタさんは眠っていました。牛さんもうごかなくなっていました。わたしはなにをしていたのかじぶんでもわかりませんでしたが、フィ=Irさんにゆすられて目がさめました。
 なんだか、すみません。
「ごめんなさい……、わたしがもっとしっかりしてれば……」
「いや、あんたはよくやったよ。A・Yちゃんがいなけりゃ、今頃ロウタのぐるぐるは止まってた」
 あ……。
 わたしはそのとき、なんでじぶんが「しにがみ」と呼ばれていたのか、わかった気がしました。
 きっとわたしは、どんなときでもぐるぐるを見つめてるんです。
「一旦帰ろう。ここでは本格的な治療ができない」
「ですね。糸を使います」
 わたしは「せいちょう」を知って、少しだめになっていました。
 今のわたしはA・Yでも、きっと、いつまでも「しにがみ」なんだと思います。「せいちょう」しても同じです。
 いつまでも、ぐるぐるを見つめていないと、わたしはわたしじゃなくなる気がしました。


 ロウタさん、本当にごめんなさい。




 ……なんだか文章のノリが悪いですね。元々上手いとは思いませんが、A・Y主体で書くにはかなり神経を使います。……ひょっとしたら書きなおすやも。
 私が使っていたA・Yは、メディックとしてほとんどの戦いに参加してきました。つまり、数多くの「生と死」を見つめてきたわけです。しかも普段の戦闘ではあまり役に立たないと。だったら「死」に対しても何らかの考えを持ってるんじゃないかと思い、この「ぐるぐる」を考えたのですが、今回のエピソードはその一つ目の転機となるんだと思います(自分で「思います」とか言うな)。
 今はまだロウタにくっ付いたりしていますが、ひょっとしたら親離れする事になるのかなあと思うと、なんだかこれからのストーリーを考えないといけなくなってしまい、時間が無くなります。ほとんどその場の勢いだけで話を書いているので、伏線としてさり気無く配置しておいたものが活かされるかどうかは微妙なのですね。
 ちなみに、伏線に見せかけたダミーも幾つか用意してあります。そっちはフィ=Irの台詞を考えるのと同じぐらい軽い気持ちで書けるので、あまり使わないようにはしていますが。
 ところで今気づいたのですが、アルケミストの術式は言霊で、いわゆる「魔法」として考えていますが、メディックも言霊を使わないといろいろ不自然になる気がしてきました。どうしましょう。この辺りの設定があるのかどうかは知りませんが、この手のは考えておかないと後々不安になります。
 パラディンでも覚えられるキュア1などは言霊に頼らなくてもできる、というのはどうでしょう(戦後手当も同様で、包帯で止血とか、ツボとか、道具と知恵でどうにかすると)。つまり、治療の言霊はそれだけ高等のものだと。だって、命の概念を覆しかねませんからね。強力な言霊と高い医療知識や技術が合わさって、初めてキュア3やエリアキュアや医術防御が使えると、そんな感じで。