突発的世界樹的小説的004話的何か

 前書き。
 友人の風野君に言われました。「皮肉を言うつもりは無いけど……、これ、書いてて恥ずかしくない?」……すごく恥ずかしいです。でもね、それはニコニコ動画でMADを作ってる君も似たようなものだと思うんだ。
 真面目っぽい理由を付けるなら、「恥ずかしいと思う文章なら、恥ずかしくなくなるように文章力を上げる」といった感じでしょうか。実際私は文章力が全然ありませんので。それと、個人的な事情により文章の練習をしなければなりませぬ、今の私は。
 あと言うなれば、「好きだから」です。下手でも良いんですよ。そこに気持ちがあれば。
 好きだから、書きます。


 銃使いヤルディムの実力は未知数だけど、少なくとも足腰は鍛えられているみたいだ。冒険者の中でもかなり速めに歩くであろう私達にも難なくついてくる。
 そうなると、彼を騙したヤツの事がかなり気になってくる。詐欺師なんてのは、相手の実力を知らずしては成り立たない。口先の職業ではあるが、「肉体的な強さ」だけでそれなりの脅威になるのだ。余程田舎臭さを出していたのか……。
 そんなわけで、太陽が沈む頃に私達は街の入り口に辿り着く事ができた。正直、手前の巨木のおかげで距離感が全然分からず、ペース配分を間違えた。
 街の門番に対して、既に冒険者として登録されているヤルディムが対応する。
「ヤルディム、ガンナーだな。……確認した。そちらの二人は?見たところ冒険者のようだが……」
「僕の故郷の友達です。共に戦ってくれると言われまして……」
「そうか。まずはギルドに登録を済ませてくれ。冒険者として登録しなければ、自由に街の中を動くことはできない。登録を済ませたら公宮にも顔を出しておくことだ」
 あっさりと街の中に入る事ができたので、少々拍子抜けした。
「管理がしっかりしてるかと思ったけど、随分いい加減だね」
「でも、犯罪は少ないんですよ。ほら、衛士が多いでしょう?」
 確かに、街中でありながら、軽鎧を着込んだ一団が多い。敵意の類が無いので実力の程は分からないが、動きが洗練されている。あれは冒険で身につくような野蛮なものではなく、格式のある訓練場で学んだものだ。
冒険者といっても、街の住民と同じですから。あまり縛り付けたくないというのがここの方針のようです」
「じゃあ、登録とかややこしい手続きをする理由は?」
「そりゃあ、あれでしょう」
 ヤルディムが上を指した。ここ数日、常に視界の端にあった巨木だ。
「あそこで見つかったものは、余程のものでない限り発見者の所有物になるんです。現状ではいつ新発見があるか分かりませんから、束縛しないまでも管理する必要があるんでしょう」
「……なんかあんの?」
「……知らないんですか?」
 ヤルディムが意外そうな顔をした。そう言われても、知らないものは知らない。
 私はさっきから喋ってないフィールの方を向いた。こいつに付いてきたんだから、こいつは知っててもおかしくない。
 フィールは、笑いを堪えていた。愛用の小型鞭がうなる。
「何があんの?」
「…………!」
「あの、喋れなくしてから質問してもしょうがないと思いますよ……?」


 私達が冒険者御用達の料亭兼酒場「鋼の棘魚亭」に入った時には、既に日が暮れていた。ちなみに、本来なら冒険者として登録していない私達は街の施設には入れないのだが、ヤルディムが監視役として同行してくれているから大丈夫なんだそうだ。登録は明日にでもしよう。
「そりゃねえちゃん、あんたの負けだよ」
 主人のおっちゃんに笑い飛ばされて、私は自分の無知を呪った。鞭使いで無知って傑作だわね。
 どうもつい最近(といっても結構前みたいだけど)、あの巨木でエトリアと同じような「世界樹の迷宮」が発見されたそうだ。元々巨木の上には「空飛ぶ城」があるとして崇められていたけど、その迷宮の中で文明の残骸のようなものが発見されたりで、伝説が真実味を帯びてきた。だから、その謎を解明するために大陸中に御触れを出したと。冒険者が管理されてるのはこれのせいね。
 で、その頃の私達はエトリアの深部に潜ってたみたいで、噂を耳にする事は無かった。エトリアはエトリアで迷宮の噂で持ちきりだったしね。二番煎じの噂なんざ知るかって。
 しかし、耳聡いフィールはそれを聞いていた。そこで観光の名目で、再び私を連れ出したと。
「ほら、ペパラーって結局迷宮が大好きじゃん。元気になるかなーって」
「ありがと」
 粗方白状したフィールを再び縛り倒す。携帯用の短い鞭で全身縛る私は、自分でも器用だと思う。
「ねえちゃん、威勢がいいなあ」
「どういたしまして。ま、世界樹の話は後回しにするとして……」
 私はヤルディムを引っ張り出した。私とフィールの漫才みたいなやり取りに動じていない辺り、結構肝が座ってる。
「この子が詐欺にあったらしいんだけど、なんか知らないかなって」
「詐欺ねえ……、まあその手の冒険者も多いからな。どんなヤツだった?」
「僕よりも年下っぽい男でした。小柄な体格で白髪、色黒の肌で……」
 ざっと特徴を挙げるヤルディムは、騙されていたにもかかわらず冷静だ。本当にどんなヤツなんだ、その詐欺師は……?尤も、こいつが勝手に騙されただけなんだけど……。
「そのぐらいの格好のヤツだと、ちょっと特定はできねえなあ。他に、服装とか無いか?」
「……なんていうんですかね、格好は……。あ、ペパラーゼさんの格好にちょっと似てました。色も、黒ですね」
 私の今の格好は、旅用のコートの下にいつものレザーだ。冒険者にしては軽装すぎるとよく言われるんだけど、この革の服は重要な部分をちゃんと守ってくれるから意外と強い……て、待てよ。
「色黒って言ったよね」
「はい、服も、肌も」
「白髪で、小柄」
「はい。特に白髪は印象的でした」
 私は店の中を見渡した。老若男女様々の冒険者が集まる店では、小娘が一人キョロキョロしたところで誰も気に留めない。…………ただ一人、話題に上っている人物を除いて。
 私はフィールを開放すると同時に、戦闘用の鞭をうならせた。数人の客の間を縫って蛇のように奔った鞭は、逃げようとした男の首に巻きついて動きを止めた。近くの客が何事かと振り向くが、私はお構いなしに男を引きずり倒す。
「フィール!」
「はいな!」
 倒れた男が剣を抜き、鞭を切断しようともがくが、一瞬早くフィールの矢が男の目の前に突き刺さる。
「次は当てるよっ」
「観念しろ、コソ泥詐欺師」
「……分かりました!分かりましたから、どうか勘弁してください、姐さん!く、首が……!」
「やだね」
 私は鞭を引っ張った。男が無様な格好で床を引きずられ、私達の目の前にまでやってくる。
「ああ、皆さん気にしないでください。単なる身内の喧嘩ですから」
「そうそう、私達まだ新人なもんで、ちょっと仲間割れしちゃって。すぐ仲直りしますから」
 私とフィールがアホみたいな釈明をする。周囲の客は納得はいかないまでも、面倒ごとに巻き込まれるのを避けて、すぐに興味を外した。うむ、冒険者に必要なのは即座の判断。こんな喧嘩に付き合う事は無いもんね。
「姐さん、首が、首が、絞まって……!」
「あんたが逃げなけりゃあ、首じゃなくて足を縛ったところなんだけどねえ……」
 「もごもご動くな、見苦しい」の意味をこめて、倒れた男の背中を軽く踏んづける。ついでにフィールが弓の先っちょで頭を突っつく。あと、何故か関係無いおっちゃんが水をぶっ掛ける。ふん、いい様さね。
「さて……ヤルディム君、犯人はこいつと見たけど、どう?」
 男は小柄の体格に白髪、更に色黒の肌と服をしていた。他の特徴としては、突き技を主体とした剣術の使い手で、口が軽くて性格も軽い。その癖妙に一本気のところがある、良くも悪くも単純なヤツだ。
「この人です。間違いありません」
「だってさ、犯罪者」
「はいすみません申し訳ありませんでしたもう二度としませんから見逃してくれませんか」
「許さん」
「勘弁してください!……フィ=Irも何か言ってよ!」
「許るさん」
「いやあぁー!」
「あの……」
 さっきから置いてけぼりの状況に、ヤルディムが申し訳なさそうに割り込んだ。ごめん、勝手に話進めちゃったね。
「フィ=Irさんの名前を知ってるようですが、お知り合いなんですか……?」
「まあね、最低のお友達だよねえ?」
「全く、人間の屑だよね。いたいけな少年を騙くらかして小金をせしめるなんてさ」
「そんな、ほんのお遊びですよ!すぐ返すつもりで、ちょっと脅かして冒険者としての心得ってヤツを身につけさせようと……!ていうかいつまで倒れてりゃ良いんですか!」
「あんたがくたばるまで……と言いたいところだけど、せっかくだからヤルディム君に自己紹介しなさい」
 私は鞭の拘束を解いた。首にアザを作って、おっちゃんに何故か水をぶっ掛けられたおかげで、そこそこの美形が台無しだ。ばーかばーか、自業自得だっつーの。
「俺は、ダークハンターのカンタール5です。エトリアで、姐さん達と一緒にギルドをやっていました」
「やらせてもらいました、だろ」
「は、ハイ!ペパラーゼの姐さんの下僕として、卑しくもギルド『Triferon』の末席を務めさせていただいておりました!」
 ヤルディム君はあっけに取られたようだ。お恥ずかしいこって。まさか身内が犯人だとはね……。


 しかし、ヤルディム君の驚きはもうちょっと別のところにもあったようだ。
 「エトリアのギルド『Triferon』がハイ・ラガードに来ている」という噂は、その日のうちに冒険者達の間に広まってしまった(大声出しやがって馬鹿男め)。参ったね。そんな気は無かったのに、勝手に有名人だよ。
 こりゃ、迷宮に潜るしかないじゃないの。ふふっ。